初めて所有した競走馬が新馬戦を圧勝、4戦目のスプリングSを父子3世代で制覇し、20日の皐月賞(G1、芝2000メートル=中山)に駒を進めた。そんな強運の持ち主が、ブライダルジュエリーなど幅広く事業展開するBIJOUPIKO(ビジュピコ)グループ会長の石部美恵子オーナー(76)。ピコチャンブラック(牡3、上原佑)と石橋脩騎手(41)に「人馬一体で頑張って」とエールを送った。【取材・構成=岡山俊明】
今年で76歳を迎えた石部美恵子オーナーは仕事一筋の人生で、最近まで競馬とは全く縁がなかった。社業を発展させた長男の石部高史社長が50歳を機に馬主となり、その勧めでチャンピオンズファーム(北海道新ひだか町)から購入した馬がキタサンブラック産駒の牡馬。父がG1・7勝の名馬で、母トランプクイーンの兄にダービー馬フサイチコンコルドや皐月賞馬アンライバルドがいることなど知る由もなかった。額に流星のある黒鹿毛馬に、ピコチャンブラックと名付けた。79年創業時の店名ジュエリーピコ(現ビジュピコ)の由来はプチトマトの品種「ピコ」から。オーナー自身が友人や孫たちから“ピコちゃん”と呼ばれて親しまれ、愛着が深い。
「30歳で創業してから仕事ばかりで趣味もありませんでした。息子から競馬は楽しいよ、夢があってロマンがあると言われて。馬はほとんど息子が選んでくれたのですが、ピコチャンブラックを最初に写真で見た時は何か、感じるものがありました。目力があるというか。血統とかは後で知りました」
ピコチャンブラックは昨夏福島の新馬戦で1番人気に応え、7馬身差で派手なデビューを飾る。
「息子たちに連れられて、生まれて初めて競馬場に行ったんです。いきなり勝つって、まれなことなんだそうですね。そんなことも分かっていませんでした」
2戦目のアイビーSは1番人気で2着。続くG1ホープフルSは3番人気で13着に敗れた。
「仕事関係のお客さまや周りの競馬好きな方々がたくさん馬券を買ってくださったのですが、みんながっかりしていて、私もすごく落ち込みましたよ。残念な思いをさせてしまったので、次は喜んでもらいたいという気持ちが強くなりました。1月までは気持ちも沈んでおりましたが、また石橋さんとコンビを組んで人馬一体で頑張っていただきたいという思いが湧いてきました」
前走スプリングSは最初の2戦で手綱を取った石橋騎手が再び騎乗。好位から3角で先頭に立ち、フクノブルーレイクの猛追を首差でしのいで重賞初制覇を飾った。祖父ブラックタイド、父キタサンブラックに続くスプリングS3代制覇を果たし、勇躍クラシックに歩みを進める。
「この1着は本当にうれしかったです。前走は大敗しましたが、ピコチャンの能力は信じていたし、今回も人気をいただいていたので、応援してくれる方のためにも絶対に勝ってほしかった。石橋さんの最後のガッツポーズは、やっぱりかなりのプレッシャーを感じていたからだと思います。一心同体で力を出し合って頑張ってくれた。そんな石橋さんにはピコチャンブラックが走り続ける限り、ずっとともに頑張ってほしいと思います。人も馬も相性があると思うんです。石橋さんは控えめな方で、他に良い騎手がいれば自分を選ばなくてもいいと言ってくださるのですが、私の中にはそんな気持ちはないです。万が一、一番最後で戻ってくることになっても、これからも石橋さんと思っています」
75歳で競馬と出会い、新たな世界が開けた。
「競馬は仕事と同じぐらい楽しい。はまってきています。頑張れる。燃えられる。夢中になれる。76歳でこんなに夢中になれることがあるとは思いませんでした。残りの人生は馬のために働かないと。孫も一緒に親子三代で馬談議に花を咲かせています。今は孫たちも息子の会社にそれぞれ入社して、社員もともに一丸となって応援できるのはうれしいですね」。
◆ビジュピコ 宝飾、時計、ブライダルジュエリーのセレクトショップで、全国に50店舗以上展開。その他、田中貴金属の売買、フランチャイズ事業、不動産業、太陽光事業も行っている。石部高史社長は「ピコ」の冠名で現4歳世代から所有。「ピコレーシング」のホームページやSNSで情報発信している。