<パリで輝け 北十字星(2)>
“3本の矢”で悲願達成だ。吉田俊介氏(51)は凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月5日=パリロンシャン)に参戦するクロワデュノール(牡3、斉藤崇)所有の(有)サンデーレーシング代表で、ビザンチンドリーム(牡4、坂口)、アロヒアリイ(牡3、田中博)を含む遠征全3頭を生産したノーザンファームの副代表を務める。今年こそ-。大一番を前に、胸のうちを語った。【取材・構成=桑原幹久、深田雄智】
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凱旋門賞制覇=日本競馬界の夢。
1969年スピードシンボリの初挑戦から56年。のべ35頭の日本馬が挑み、阻まれた。重い扉を開けようとするほど、前出の構図は色濃くなる。
「夢…ですか。そういうのは持ったことがないかもしれませんね」
日本競馬界のトップを走るノーザンファームの副代表、吉田俊介氏が言葉を紡いだ。
「目標は全部勝ちたいです。凱旋門賞もドバイワールドCもBCも。でもやっぱり凱旋門賞は昔からありますし、僕のおじいさん(吉田善哉氏)や(シンボリ牧場の)和田共弘さんも勝ちたかった。僕もディープインパクト(06年3位入線後失格)、オルフェーヴル(12、13年ともに2着)のおかげで“勝たないといけないレース”だと感じましたし、どの時代でもずっと勝ちたいレースだと思います」
馬肥ゆる秋の風物詩に、今年はノーザンファーム生産の3頭が挑む。
クロワデュノールは“大将”だ。第92代ダービー馬として日の丸を背負う。
「皐月賞で負けて(2着)表彰式が終わった直後、調教師から『登録していいですか?』と言われて『いいよ。ダービーを勝たないと行けないけどね』と返しました。3歳のうちに挑戦できることは斤量面などいい部分があるのかなと思います」
前哨戦は3週前のG3プランスドランジュ賞を選択。距離こそ2000メートルだが、本番と同じパリロンシャン競馬場を経験できる。結果は好位から僅差で勝利。
「調教師の強い希望でした。中3週以上がいいかもしれませんが、ロンシャンの2400メートルを短い間に2回走るよりこの距離がいいと。直前の雨で芝が飛ぶような馬場でしたし、日本では絶対にあり得ないスローペース。上がりがすごく速い競馬を勝ち切ってくれたのは良かったと思います。(状態面で)物足りなさを感じていたのは事実だったようで、1度使うと状態が上がる馬なので使って上がってくれればと思います」
ビザンチンドリームは“結晶”だ。4代母のラスティックベルは米国から94年に輸入されノーザンファームで繁殖入り。2番子の3代母フサイチエアデールから祖母グリッターカーラ、母ジャポニカーラと同ファームが血をつないだ。
「事情があってクラブやセリに出せなくて、2歳春の時点を思うとこんなに強くなるんだな、という感じですね。成長力がすごいです。力のいる馬場が合いそうということで、けっこう早い段階で『凱旋門賞に行っていいですか?』と育成を担当するノーザンファームしがらき場長の松本から話がありました」
今年はサウジアラビアに海外初遠征。快勝し天皇賞・春も2着と好走した。遠征初戦は王道のフォワ賞へ。中団から馬群をぬって差し切り、昨年の凱旋門賞3、4着馬を下した。G1未勝利で伏兵扱いだったが、現地評価をぐんと上げた。
「よく届きましたよね。現地到着から9日でのレースでしたし、本番の方が状態はいいと思います」
アロヒアリイは“異色”だ。22年セレクトセール出身馬(当歳部門6000万円)で遠征前時点では新馬戦勝ちのみの1勝馬。逃げ切ったギヨームドルナノ賞が重賞初勝利で、鈴木剛史オーナーが夢に掲げる凱旋門賞制覇へ挑戦権を得た。
「見事ですよね。我々は大事な出資馬をマネジメントしないといけないので、クラブの馬では組めないローテーションだなと思います。オーナーさんたちの夢、意向のおかげで実現した勝利、凱旋門賞挑戦。僕より若い方ですし素晴らしいと思います」
父ドゥラメンテ、母父オルフェーヴルは代表を務めるサンデーレーシングの所有馬で、鈴木オーナーは12年凱旋門賞2着の後者の走りを見て、馬主を志したという。
「オルフェの最初の2着の頃は、その後10年以上勝てないとは思わなかったですけど…。ちょっとやそこらじゃへこたれなくなりました」
“三馬三様”の道からフランスへたどり着き、3頭とも現地で前哨戦を勝利。意気揚々といざ、本番だ。
「現時点では申し分ないですよね。日本でもレースがあるので僕も父(吉田勝己氏)も現地という予定を組んだことがないですが、今年は6、7月から行くという話になっていました。両親が来るのは久々ですね、天気や運も味方しないと勝てないですし、挑戦する度に難しいなと思いますが、これという馬がいれば挑戦しないといけないと思います。早く勝ちたいです」
大願成就の先に、新たな景色が待っている。