【凱旋門賞】日本馬なぜ勝てない?3つの要因 競馬記者7年目、初の凱旋門賞取材マイクが分析

<凱旋門賞>◇5日=パリロンシャン(フランス)◇G1◇芝2400メートル◇3歳上・牡牝◇出走17頭◇1着賞金約4億8600万円

【パリ(フランス)5日=藤本真育】日本馬3頭の挑戦は、ビザンチンドリーム(牡4、坂口)の5着が最先着だった。今年も夢破れた日本勢の敗因について、競馬担当7年目で初めて凱旋門賞を取材した藤本真育記者が分析した。ペース、馬場、運などの要素を提示。世界トップレベルにある日本馬が、凱旋門賞を勝つ日は来るのか? 今後の可能性も探った。

①経験のないスローペース

競馬担当7年目で初めてパリロンシャン競馬場に足を踏み入れた。5日の朝は、ゴール付近から最終コーナー途中にあるフォルスストレート付近まで歩いた。空気を吸い、歓声を聞き、足裏で芝の質を確かめた。そしてレースを見届け、関係者を取材した。今年の現場を体感した記者として、日本馬が凱旋門賞を勝てない要因を書きたい。

まずは「ペースの違い」だ。今年の勝ち時計は2分29秒17。序盤でハナを切ったホタツェルの前半3ハロンは37秒83だった。日本の標準はどうか? 3角から4角にかけて上り下りの坂がある点で共通する京都芝2400メートルで、15年以降のオープンクラス(計16レース)の平均勝ち時計は2分24秒9。前半3ハロンの平均は35秒4。今年の凱旋門賞と単純比較すると、走破時計が4秒27(約21馬身)、前半3ハロンは2秒43(約12馬身)も違う。

欧州特有の遅いラップの経験が少ない日本馬は、序盤からリズムを崩してスタミナを消耗しがち。今回、クロワデュノールの前半3ハロンは37秒92。何とか2番手で抑えていたが、1000メートル付近では抑えきれないように先頭に立った。これまで経験したことのない展開でギアが上がらず、後半は1ハロン11秒台の脚を使えなかった。

一方、勝ったダリズは前半38秒28。内の9番手で折り合い脚をためた。ラスト3ハロンは11秒91-11秒57-12秒05で差し切った。過去のパリロンシャンでも4戦3勝、2着1回と好走を重ねており、その経験もスローペースに動じず発揮した今回の末脚につながったのだろう。

②「田んぼ」のような粘る馬場

路盤自体も異なる。「陸上競技場のタータン(合成ゴムを使用した滑りにくい舗装材)」のような日本の馬場に対し、5日のパリロンシャンはルメール騎手が「前脚をつくと粘り気があるので、次に踏み出す時になかなか抜けない」という、まるで「田んぼ」のような馬場。18年にフランスで厩舎を開業した清水裕夫調教師(43)は「こっちのやや重が、日本の不良」という。それを物差しにすると、今回の馬場は「トレ・スープル」(重)なので、日本の不良よりさらに道悪ということになる。しかもレース直前に激しい雨が降った。陸上のトラックから、砂浜に競技場を移すようなものか。走り慣れないコースなら、体力を消耗するのも当然だ。

③運なかった厳しい外枠

そして「運」。少頭数の前哨戦とは違い、頭数が多くなる凱旋門賞は圧倒的に内枠有利。スターティングゲートが導入された64年以降、最多勝の2番ゲートが今年も勝利(8勝目)。さらに、2着ミニーホークが1番ゲート、3着ソジーが3番ゲートと内枠勢で上位を独占した。内ラチから5メートル外の仮柵が凱旋門賞当日だけ外され、オープンストレッチが開放される。普段使ってない部分を使えるのだから当然内はきれいで走りやすい。1番人気アヴァンチュールも12番ゲートから外を回す形で11着に敗れた。大外17番のクロワデュノールは運もなかった。

日本馬は世界トップレベルにあるのは確かだ。実際、クロワデュノールは前哨戦ではダリズを下している。日本でG1を勝ってないビザンチンドリームが、15番ゲートから内に潜り込み5着に健闘したことも、今後の希望につながる。スローペース打破には、ある程度のラップでレースを引っ張る“リードホース”を参戦させることも必要かもしれない。経験、戦略、運…。近い将来、ピースが組み合わされば勝利の扉は開くはずだ。【藤本真育】