「いきなり言われても困るよ」からの“神対応”JRA最年長59歳の柴田善臣騎手が思いを込めた

26年の書き初めで「左馬」と書いた柴田善臣騎手

今年もよろしくお願いします-。午(うま)年生まれの年男、JRA現役最年長ジョッキーの柴田善臣騎手(59)が新年の誓いだ。

11年ぶりに騎乗する日刊スポーツ賞中山金杯(G3、芝2000メートル、4日)ではピースワンデュック(牡5、大竹)とコンビを組み、夏にはJRA初の還暦ジョッキーへ。どこまでも馬乗りを楽しむ“ヨシトミ”の騎手人生を応援したい。

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還暦を迎える年になった柴田善臣騎手は「45歳くらいで辞めようと思ったこともあるよ。あれ、俺もう40年以上も騎手やっているのか。おかしいよな。はっはっは」と笑いを交えながら、これまでの騎手生活を振り返る。調教師になるタイミングもあったが、「少し考えた。周りからそういう話もあったし。でも、調教師は馬だけ育てりゃいいってもんじゃない。ジョッキー、厩務員、その家族。すごい重大な職業だと思っていた。自分は気楽に1人で馬に乗って、楽な道を選んだ(笑い)」。謙遜するが、仕事かつ一番の趣味ともいえる馬乗りを選んだ。「最近もジョッキーを辞めようって思ったこともある。けがから入院、痛い思いをして、手術して、でも馬に乗るのは大好き。やっぱり楽しいし、いろんな馬がいるし、1頭の馬でも毎日違うし。気分もあるし、そういうのを感じ取るのが好き。動きについていくのも好き。ましてや、そういうのを制御する、操縦するのが好き」。馬乗りが好き。その気持ちが今もなおステッキを置くことを忘れさせ、こうやって競馬ファンに熟練の手綱さばきを見せ続ける原動力となっている。

そんな大ベテランに1つのお願いをした。年男としての書き初めだ。最初は「清水寺のお坊さんたちもずっと前から字を決めて、練習しているんだぜ。いきなり言われても困るよ」と渋っていたが、筆を握ると「じゃあ、字はどうするよ」と神対応で字を選ぶまでに至った。渾身(こんしん)の1文字は逆文字の「馬」。通称左馬と呼ばれ「うま」を逆から読むと「まう」になり、めでたい席で踊る「舞い」を想起し、縁起のいい字として知られる。「左馬って言うんだよね。これだな。26年は午(うま)年だし」。多趣味で知られる名手は仕事かつ最大の趣味ともいえる馬乗り、縁起、干支(えと)とあらゆる意味をこの1字に込めた。

午(うま)年の目標は「とりあえず60歳を迎える」と大ベテラン。自身1つ1つの勝利の度に、JRAの最年長勝利記録が更新される。誕生日は7月30日。還暦になるその日までに、何回記録を更新し、競馬ファンにいつまでも変わらない騎乗姿を見せてくれるか。競馬の歴史ともいえる偉大な騎手の新年が始まる。【舟元祐二】

◆柴田善臣(しばた・よしとみ)1966年(昭41)7月30日、青森県生まれ。JRA競馬学校騎手課程の1期生。85年3月にデビューし、4月に初勝利(イズミサンエイ)を挙げた。88年の中山牝馬S(ソウシンホウジュ)でJRA重賞初勝利。JRA・G1は93年安田記念(ヤマニンゼファー)で初勝利を挙げ、計9勝。通算2万2243戦2338勝(重賞96勝)。164センチ、53キロ。血液型はA。叔父は柴田政人(元騎手、調教師)。22年春にJRA現役騎手で史上初の黄綬褒章を受章。同年のJRA賞特別賞を受賞している。