矢作芳人調教師「ぜひ記者が書いた評論記事を読みたい。記者にやってほしい」創刊80周年企画

矢作芳人調教師(2026年2月21日撮影)

日刊スポーツ創刊80周年特別企画の第2弾は、競馬界からJRA・矢作芳人調教師(64)の登場です。昨年、フォーエバーヤングでダート競馬の世界最高峰ブリーダーズCクラシックを制覇、今年2月には1着賞金約15億5000万円、世界最高賞金額のサウジCを連覇。国内外にその名を知られる「世界のYAHAGI」は、小学生からスポーツ新聞を愛読する活字愛好者でした。新聞への提言や自らの未来を語ってくれました。【取材・構成=鈴木良一】

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矢作師は自らをこう分析した。

「俺は活字を見ないとダメな人。今の時代から逆行しているのかな。本も電子書籍では読まないで、普通の本を買う。新聞もそう。新聞を買う」

スポーツ新聞との付き合いは半世紀を軽く超える。

「最初は小学生のころ。父(2024年に死去した和人さんは大井競馬の調教師)の関係で身近だった。それからずっと、途切れることなく読んできた」

以来、あらゆるジャンルの記事を愛読してきた。

「競馬だけじゃなく、野球やスポーツも。子どものころの1面で記憶にあるのは、やっぱり長嶋さんの引退かな。オリンピックが好きだったから、ミュンヘン、モントリオールも覚えている。モスクワは日本が参加しなくて寂しかった。昔はスポーツ新聞でもサッカーの記事が少なかったけど、今は多くなってうれしい」

日刊スポーツにはどんなイメージを持っているのだろう。

「正統派って表現はちょっと違う気もするけど、例えば報知なら巨人色が強かったり、デイリーなら阪神が続いたりするじゃない。日刊はそういう点では中立というか、素直に記事にしているという感じがする」

今、日刊スポーツでは社会面を欠かさずに読む。

「裏から2枚めくった面(社会面)、あそこは必ず読んでいるね。永田町の動向や健康の連載、この前は糖尿病の話もあったね」

競馬の世界に入ってからも、新聞に載る自らの記事は気になった。

「調教助手や調教師として実績のないころは、新聞を開いて『こんなに注目されていないんだ』とか『こんな注目されているんだ』と感じたこともあった。以前は新聞を見ないと載っているかどうかわからないから、非常に注目していた。ただ、ここ10年はどうしてもネット先行だからね。馬の情報も、まずそっち。速報性ではネットだよね」

紙媒体の未来が決して明るくない現状を理解した上で、競馬報道に1つのリクエストをする。

「やっぱり評論の記事を読みたい。野球やサッカーでは、批判も含めたそういう記事は必ずあるでしょ。それが競馬には少ないと思う。元騎手や元調教師がではなく、記者がそういう記事を書くべきだと思っている。記者っていうのはそういうことをする人だと思う。ぜひ、やってほしい」

最後に自らの未来について話してくれた。ダート競馬世界最高峰のレースを制した今を「10年前には想像すらできなかった」という。では、どんな10年先を想像しているのだろう。

「やっぱり、今より気楽になりたい(笑い)。旅行が好きだから、あっちこっちに行きたいな」

競馬から離れるのか。

「いや、やっぱり競馬は常に近くあるだろうね。一生、勉強だし。気楽に、馬券という意味だけじゃなく、競馬全体を楽しめるようなことをしたい。旅行で海外のビッグレースを見るとか、もちろん日本でも」

競馬とは一生の付き合い-。ただ、インタビューの締めに1つ、付け加えた。

「予想をすることはないだろうな。だって絶対に、当たらないもん。予想記事みたいなものを書くことはないと思う(笑い)」

○…2月のサウジCで連覇を飾ったフォーエバーヤングには、矢作師もすごみを感じている。サウジでの走りを振り返り「あの馬がすごいのは常にアウェーっていうか、何千マイル、何千キロって離れた場所で戦っている。日本国内だけで走っているのとはえらい違いで、そこに価値というか、すごさを感じる」と絶賛。「あれだけ遠い国で本来のパフォーマンスを発揮できる馬はなかなかいない。心技体、すべてがそろっていないとできることではない」と、言葉を続けた。

◆矢作芳人(やはぎ・よしと) 1961年(昭36)3月20日、東京都生まれ。厩務員、調教助手を経て14度目の挑戦で調教師試験に合格。開業は05年。10年朝日杯FS(グランプリボス)でG1初制覇。以来、国内外で輝かしい成績を残すトップトレーナー。