異例の電撃復帰を決めた名伯楽の胸のうちは-。
JRA通算1123勝でアパパネ、アーモンドアイと2頭の3冠牝馬を手がけ、今年3月3日で定年引退した国枝栄元調教師(70)が、7日から美浦の小島茂之厩舎でヘルパーの補充員として勤務することが3日、分かった。
この日、国枝元師は美浦トレセンで取材に対応。もともと使用していた厩舎で、晴れ晴れとした表情だった。「引退するって時にこれからどうするかなと。去年暮れあたりからそういう考えになったってことだね。まあ別段特に何やるっちゅうこともないから」と考えを明かした。
厩舎スタッフは、調教を担当する調教助手と日ごろの管理を担当する厩務員に大きく分かれる。けがと隣り合わせの職業で、欠員が出た際に正規雇用者とは別に補充員として雇われるケースがある。ただ、調教師からの転身は異例。「調教師会が人事をやっているから事務局に聞いたら別段断る理由もないと。シゲ(小島師)も俺もOKならってことで」と関係各所に確認を取り、実現した。
東京農工大では馬術部に所属。美浦トレセン開業の78年から調教助手としてこの道に進んだ。現在は調教助手の中で調教を専門に行う「攻め専」、担当馬を持つ「持ち乗り」の2種類あるが「当時は助手か厩務員しかなくて、俺は馬に乗ってたから助手。少し厩務員として馬を見たこともあったけど、長くやったことはないからね。今までは人を介して馬をやってきたけど、自分でやってみたくてね」と続けた。
調教師の定年前にも馬にまたがり、坂路や角馬場で騎乗していた。「まあ実際にコースとなるといろいろあれだから、準備運動や角馬場で軽いキャンターとかできる範囲で仕事はしようということ。中途半端じゃ駄目だし、自己満足でやってますじゃ駄目。冷やかしでやってんじゃないんだから。労働としてちゃんと評価されるという条件でね」といちスタッフとして馬と向き合う。
「ゆっくりしたい? もう旅行は行ってきたから大丈夫。今度からも楽しみなことをやるわけだから。もう取材は受けないよ。就業中です、ってね。パドックで引く時も変装してばれないようにいかないとだな(笑い)」
集まった報道陣と笑い合いながら、新たな道への思いを口にした。
◆国枝栄(くにえだ・さかえ)1955年(昭30)4月14日、岐阜県生まれ。東京農工大卒。1978年に美浦・山崎彰義厩舎で調教助手となり、1989年に調教師免許を取得。1990年開業。1998年ダービー卿CT(ブラックホーク)で重賞初制覇。1999年スプリンターズS(ブラックホーク)でG1初制覇。2009年アパパネ、2018年アーモンドアイで2度の牝馬3冠制覇を達成。2007年有馬記念をマツリダゴッホで制覇。JRA通算9508戦1121勝。現役唯一の1000勝以上で同最多勝。JRA重賞70勝(うちG1は22勝)。2019年にアーモンドアイでドバイターフ制覇。