G1を3勝したストレイトガール(牝)が死亡した。現役時代に担当した田中博司助手(現福永厩舎調教助手)が思い出を振り返った。
夏の北海道出張に行けば休日にASK STUDに会いに行くのが恒例だった。牧場スタッフや人間に対しては警戒心が強いものの、田中さんの足音を聞くと大きくいななき愛嬌(あいきょう)を振りまいたという。「俺の歩き方が、ちょっとかかとをする歩きだから分かるのかもしれない」。スタッフからは「ストレイトが人に対してこういう態度をするんですね!?」と驚かれた。
「いつもニンジンをいっぱい持って行って食べさせて。この仕事をしていれば、別れがあるのは分かっている。分かっているんだけど、実際にこうなるとね。牧場に行ってもいないのかと思うと…」と言葉を詰まらせた。
キャリアの転機となったのは4歳の夏、2013年だったという。「札幌競馬場が工事で夏の開催は函館のみの年。輸送がないので詰めて使えた」。6月16日を皮切りに連闘、中2週、連闘、中2週、中1週で、約2カ月間を6戦4勝、2着2回。「担当してくれた獣医さんも『どんどん良くなってます』と言ってくれたほど」。
5歳の高松宮記念、ヴィクトリアマイルで3着。秋のスプリンターズS2着に香港スプリント3着。6歳の高松宮記念は13着と大敗した後のヴィクトリアマイルでついにG1に手が届いた。2着馬とは内と外で離れた頭差で「また2着か」とよぎった後だけに喜びはひとしおだった。
前哨戦で多少余裕がある作りをして、本番で一変するのがパターン。ところが2016年4月の阪神牝馬Sで9着に敗れた。「ちょっとズルさを覚えはじめたのかな」とよぎり、ヴィクトリアマイルへの調教負荷を高めた。すると本番では一変して2馬身半ちぎった。JRA史上初めて、7歳牝馬がG1を勝った。「(戸崎)圭太も不安はあったと思う。その後に『一番強い勝ち方じゃないですか』と驚かれたよ」。
ただ、連覇したヴィクトリアマイル後に多少の異変は感じたという。「普段のレース後でも絶対にカイバを残さないのに、この時に初めて残していた」。馬自身は、次のステップに進む準備をしていたのかもしれない。この勝利を最後に引退し繁殖牝馬となった。「どこかですごい子が出そうな感じはするんだけどね」。1歳と当歳には父イクイノックスの牡馬がすくすくと育っている。
田中さんは今夏もASK STUDに行き、墓前に手を合わせる。