【とっておきメモ】「夜中に目が覚めた」「変な汗を…」松山騎手と杉山晴師が乗り越えた“あの日”

口取りに向かう松山弘平騎手と杉山晴紀調教師(撮影・丹羽敏通)

<ダービー>◇31日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳牡牝◇出走18頭

1番人気ロブチェン(牡、杉山晴)が接戦をものにして2冠制覇を達成した。松山弘平騎手(36)は、11度目の挑戦でダービージョッキーの称号を手にした。

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極限の緊張を乗り越えた“あの日”があるから、今がある。

松山騎手と杉山晴師はともに、握りつぶされるような重圧にさいなまれた記憶を共有する。20年10月18日の京都競馬場。デアリングタクトが無敗での牝馬3冠に挑んだ秋華賞だ。

「成し遂げるか成し遂げないかで人生が変わる」

史上初の快挙を前にして、追い詰められた松山騎手は「夜中にしょっちゅう目が覚めた」という。

「ピークは乗る瞬間でした」

またがる直前の地下馬道に、汗ばんだ2冠牝馬が小走りで現れた。人馬とも精神状態は限界だった。

だが、その背に乗れば、腹をくくれた。胸に刻まれていたのは、勝負強い先輩騎手からの金言だ。

「緊張しないとG1は勝てない」-。

兄のように仰ぐ池添騎手の助言だった。

「なかなかG1を勝てなかった時期にアドバイスをいただいて、気持ちが楽になりました。『緊張していいんだ』と思えて。乗ってしまえばもう、やるしかないですから」

杉山晴師もまた追い込まれていた。イレ込みを目にして「生きた心地がしなかった。『これは駄目だ』と。僕自身も変な汗をかいた」と惨敗も覚悟したという。だが…。

最後は愛馬を信じるしかない。逃げ場のないプレッシャーのはざまで、それぞれが見いだした真理だった。新たな勲章を手にした名手と名将。今の2人なら、牡牝3冠制覇の偉業も成し遂げてくれそうだ。【中央競馬担当=太田尚樹】