【函館便り】70歳加藤和宏師、思い出詰まったラスト函館に臨みます

来年の定年を前に調教師として最後の函館開催に臨む加藤和宏師

函館競馬場に加藤和宏調教師(70)の姿がありました。来年定年を迎えるので、この夏が師にとって最後の函館開催となります。

「函館には二十歳からずっと来ているからね。騎手の時は毎年3カ月滞在していました。第二の故郷なんです」と穏やかにほほ笑む。ジョッキー時代はホウヨウボーイやシャダイアイバー、アンバーシャダイ、シリウスシンボリ、ホクトベガ、ワールドクリークでビッグレースを制覇。度胸満点の勝負強い騎手として信頼されていました。ダービーが終わって北海道開催が始まると、自厩舎である二本柳俊夫厩舎の調教をつけるために函館に長期滞在。昔は札幌2カ月→函館2カ月の順番で、最初の2カ月は競馬に全く乗らずに函館で調教に専念した時期もあったそうです。「うちの厩舎は毎年函館に12馬房を確保していました。師匠の故郷でもあるので。競馬に使うのではなく、秋に向けての下準備が主でした」。二本柳厩舎の馬は秋になると化けると言われました。

函館記念は87年ウインドストースと97年アロハドリームで勝っています。「ウインドストースは軽いキャンターでつまずくのに、速いところにいくと乗りやすかった不思議な馬。口取り写真には士津八も一緒に写っていますよ」。長男で現調教師の加藤士津八師は当時2歳です。

「アロハドリームは気が悪くて、速く抜け出すとソラを使う。その癖を出さないように乗れました」。ダービー馬シリウスシンボリが6歳時に挑んだ88年函館記念は語り草となっています。サッカーボーイ、メリーナイス、マックスビューティといったG1馬が顔をそろえて空前の豪華メンバー。シリウスシンボリは全盛期の走りを取り戻せない中で、4着と意地を見せました。「長期滞在したヨーロッパから前の年に帰って、走り方が変わっていた。大きなストライドが細かくなってしまって…。力はあるのでそれなりに来てくれたけれど、いい状態で臨めればもっといい競馬ができた」。伝説の函館記念は多くのオールドファンの記憶に刻み込まれていることでしょう。

二本柳俊夫師は函館山のふもと、立待岬にある墓に眠っていて、毎年の墓参りを欠かさないそうです。函館で競馬が開催されて130周年、強いきずなで結ばれた師弟の足跡も刻まれています。【岡山俊明】