欧州の芝中・長距離路線、上半期王者を決めるキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1、芝2390メートル)が25日(日本時間午後11時35分発走予定)に英国・アスコット競馬場で行われる。日本勢からは昨年の天皇賞・秋覇者マスカレードボール(牡4、手塚久)、今年の天皇賞・春2着ヴェルテンベルク(牡6、宮本)の2頭が、2019年シュヴァルグラン以来の参戦。「キングへの挑戦~Road to Ascot~」と題し、陣営に迫る連載全4回をスタート。第1回は両馬を生産した社台ファームの吉田照哉代表(78)が“2つのリベンジ”を語った。【取材・構成=桑原幹久】
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昨年の“頭差”と20年前の“1馬身差”。いずれも「黄、黒縦縞、袖青一本輪」の勝負服が、世界の壁に屈したワンシーンだ。“2つのリベンジ”を狙う社台ファームの吉田照哉代表が、まずは昨年のジャパンCに触れた。
「マスカレードボールが去年のジャパンCでカランダガンとあわやの勝負をした。これはもう、また戦わなきゃいけないなと思ってね」
当時世界ランク首位のフランス馬カランダガンに、天皇賞・秋覇者マスカレードボールが頭差2着。ホームの日本で敗れた悔しさを、アウェーの地で晴らしに行く。
「この間(サンクルー大賞)も強かった。それでも、日本のチャンピオンがいけばいい勝負になると思うんですよ。2番人気だっていうからね。相手は強いですけど、やってみないと分からない。天気さえよくなってくれればね」
次に2006年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS。前年の有馬記念でディープインパクトを下したハーツクライが参戦。凱旋門賞覇者ハリケーンラン、ドバイワールドC覇者エレクトロキューショニストと競り合い、前者から1馬身、後者から半馬身差の3着と奮闘した。
「ほとんど負けていないからね。ハーツクライは相当いい馬だった。ドバイ(シーマC)で圧勝して『今年はあの馬にやられる』なんて外国人がおだてて言ってくれたのを覚えていますよ」
経験は無駄にしない。当時は帯同馬がおらず、調整に苦労した。
「1頭だけ周りに馬がいない厩舎に入ったりして、非常に体重が落ちちゃってね。今年はたくさん馬がいるようなところで、日本人のスタッフもたくさんいるところにしました。ハーツクライがいった頃だって日本の馬は強いですよ。ただ、今みたいに自由に外国に行く時代でもなかった。輸送をどうするか、どういう厩舎に入れるかとか、そういうノウハウは今の方が優れているよね」
昨年、ノーザンファーム代表で弟の勝己氏とともに、アジア出身で初の英国ジョッキークラブ名誉会員の一員となった。
「もっと日本の馬をイギリスに持ってきた方がいいっていうのも含んでいるんじゃないかなって(笑い)。ご商売が上手だからね(笑い)。でもいいことですよね。競馬ってそういうものだからね。ある意味、日本もイギリスから認められたということですから、素直に喜んでおります」
近代競馬発祥の地で行われる上半期欧州王者決定戦に、満を持して2頭を送り出す。
「日本の競馬を世界的なものにしないとね。盛り上げるために絶対に必要なことだと思うので。競馬はやってみないと分からないから。まあまあ、期待して見ていてください」(つづく)
◆吉田照哉(よしだ・てるや)1947年(昭22)11月12日、千葉県成田市生まれ。社台ファーム代表。慶大卒業後、父善哉氏が経営する同ファームに入社。希代の名種牡馬サンデーサイレンス(1991年から社台スタリオンステーションで種牡馬入り)を導入するなど、日本競馬の発展に大きく貢献。千津夫人も馬主で、息子の哲哉氏はマスカレードボールを所有する社台レースホース代表を務める。弟の勝己氏はノーザンファーム代表、晴哉氏は追分ファーム代表。