今夏の2歳重賞では、未勝利馬の出走が相次いだ。
夏の2歳重賞は出走資格が「2歳」と明記されており、未勝利馬でも出走自体は可能である。
他の重賞では「除未出走馬および未勝利馬」と出走資格を定めている競走もあり、夏の2歳重賞とは出走資格の扱いが異なる。
その中で、新潟2歳Sでは出走10頭中5頭、中京2歳Sでは9頭中3頭、札幌2歳Sでは9頭中5頭が未勝利馬。新馬や未勝利戦で善戦した馬もいれば、着外に敗れた馬の参戦もあった。
前年と比較すると、新潟2歳S、札幌2歳Sに未勝利馬の参戦はなく、中京2歳Sに出走した未勝利馬も、新馬戦で鼻差の2着と好走した1頭のみだった。
この1年で、真夏の2歳重賞へ出走する馬の顔ぶれが変わったのはなぜか。
原因の一つは「夏は使わない」という風潮が根付いた点にある。
「こんな暑い時期に、孫をトラックで走らせるようなもの。そんなことできない」。
トレセンでの取材中、とある調教師が言ってきた言葉だ。
まだ成長期にある2歳馬を無理させることはできない。
夏に連戦したことにより、秋以降のダメージにもつながる。
リスクをとらずに、成長を促すのは自然な選択といえる。
調教師の方々も、時代の変遷を感じ取っているようで「昔は新馬勝ったら“使えるとこまで使っちゃおう”ってなっていたんですけどね。今はやっぱり、夏を休ませるのがセオリーになりつつありますよね」と明かしていた。
余裕を持って来春のクラシックへ臨むべく、近年は早期デビュー組が暑い夏を避けて放牧に出され、秋で賞金加算を狙うケースが定着。
おのずと夏の2歳重賞の出走枠に余裕が生まれ、未勝利馬に重賞出走の選択肢が出てきた。
★未勝利馬が重賞に出る理由
ここからは出走させた未勝利馬陣営の視点をクローズアップする。
未勝利馬を重賞に出走させる抵抗感は薄い。
今回出走させた厩舎の中には「未勝利で入着できれば」という条件を設け、未勝利戦を使う時点で重賞挑戦を視野に入れていた陣営もあった。
一部の調教師からは「出走馬が増えること自体は、競馬界にとっても悪いことではない」という声も聞かれた。
★実質3~4頭立て?
さらには「勝ってきた馬が5頭だとして、その中で万全な状態、状況じゃない馬もいる。そうなると実質3~4頭立てで、未勝利馬にも掲示板に入るチャンスが出てくる」といった狙いもある。
掲示板に入れば、賞金も多くもらえる。そうなれば「何よりも馬主さんが喜んでくれます」という一つの戦略となる。
ただJRAでは“タイムオーバー制度”を設けている。
特別出走手当として、出走1回につき55万円が交付(2歳馬競走には5万円が加算される措置となる)。
しかし、平地重賞において、未出走馬および未勝利馬の「1着馬とのタイム差」が一定時間を超えた場合、着順にかかわらず不交付、と明記されている。
2歳新馬以外の平地競走では、1400メートル以下では芝だと3秒、ダートは4秒。1400メートル超2000メートル未満だと芝では4秒、ダートでは5秒。2000メートル以上は芝だと5秒、ダートでは6秒と設定されている。
未勝利馬を重賞に出走させるのは制度上問題なく、その上で手当だけを目的にした出走とはならない設定としている。
今年の2歳重賞に使ってきた馬の大半は、はっきり言って実力差が明確。調教の動きも、パドックで見る馬体も歴然の差であったのは言うまでもない。
この事象が来年以降も続けば、重賞の格付けとしてふさわしい競走なのか、と立場も危うくなる。
★夏の2歳重賞に価値はある
ただ、取材を通して「こうした出来事は今年だけだと思う」という声が多かった。
また2歳馬を管理する陣営にとって、暑熱対策競馬を歓迎する声も。「パドックの周回時間も短いから、馬もそこまで入れ込まない。2歳の若い時期としてはかなりありがたい。レースが終わってすぐシャワーで体を冷やせますしね」という意見も。
来年以降は、各陣営が考慮してレースに使ってくるとみる。
今年のクラシックをにぎわせたのは、夏の2歳重賞で活躍したリアライズシリウスやスターアニスだった。
新潟や中京は広いコースで紛れが少なく、力を発揮しやすい。札幌も1800メートルであれば翌年のクラシックを意識できる舞台だ。
その一方で、将来を意識した力のある馬が出走している。
ある調教師は「この時期に世代重賞があるのはありがたいですよ。いい勝負ができたらその後も期待できるし、賞金加算ができれば今後のローテが楽になる。もし厳しい結果になっても、実力差を測れたと捉えて、今後やることが明確になりますから」とポジティブに感じている。
★売得金大幅ダウン…どうなる2歳重賞
未勝利馬の参戦が相次いだ今年だけを見て「2歳重賞は廃止にすべきか」という議論に移るのはまだ早計だ。
競馬ファンの立場としては、将来性のある馬をいち早く見つけ、馬券を的中させるのが何よりも盛り上がる。
ただ今年のメンバーでは、予想に全く歯ごたえを感じなかった方も多いだろう。
この3重賞の売得金が前年より大きく下回ったのも事実(前年比で新潟は80・9%、中京は77・1%、札幌は71・2%)。
この状況にてこ入れするなら“路線の差別化”が望ましい。
新潟と札幌は現行通りとして、中京は1200メートルで開催するのがベストだろう。こちらは現場でも多数の声が上がっている。
夏は1200メートルの新馬が多く、その流れで路線を統一できるローテを組めるからだ。
新潟をマイル路線組、札幌を北海道デビューの中距離組、中京をスプリント路線組と、夏の総決算として位置づけるのが、夏の2歳重賞としての存在価値を守る方法ではないだろうか。【深田雄智】