米国競馬の祭典で、テーオーエルビス(牡4、高柳大)が快挙を遂げた。10月31日(日本時間11月1日)、キーンランド競馬場で行われたBCスプリント(G1、ダート1200メートル)を日本調教馬として初優勝。層が厚い北米ダート短距離の最高峰レースで、大外から豪快に末脚を伸ばした。
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テーオーエルビスを育成した山岡トレーニングセンター(岐阜県)の村松憲場長(45)は、驚きまじりに声を弾ませる。「びっくりしました。あんなところから差し切るとは。もう、ゲームかよと思いましたもん。ダビスタみたいな脚でしたよね(笑い)」。本命視されたイングリッシュマンの押し切り濃厚かと思われたとき、幼少期から手がけてきた馬が、目の覚めるような末脚で飛んできた。
日本時間早朝4時40分すぎに発走したBCスプリント。村松場長は、リアルタイムでテレビの画面越しに声援を送った。「午前2時に目覚ましをセットして、グリーンチャンネルをつけて。厩舎作業があるので、レースが終わったあとは牧場に行って、スタッフたちと喜びを分かち合いました」。帰宅後、何度もレース映像を見返して余韻に浸った。
米国産馬のテーオーエルビスが来日し、山岡トレセンに入厩したのが1歳秋。「当時から、ほかの馬とは違う感じはありました。落ち着きがあったし、歩いていても雰囲気が良かった」。堂々とした性格で、同世代の中でもリード役を務めたという。
BCスプリントを制し、これで6連勝となった。国内外で通算10戦7勝、3着3回。これまではレースが終わると、短期放牧も含めて毎回のように山岡トレセンでリフレッシュし、調整されてきた。初めての海外遠征だった5月の前走、チャーチルダウンズS(G1)から帰国後も、大自然に囲まれた当地で4カ月ほど過ごした。村松場長は「夏負けもなく、本当に順調にいきました」とうなずく。
物静かで聡明。そんなテーオーエルビスは、トレセンに戻るタイミングが近づくと、自ら体をつくるという。「今回も、春からさらにパンプアップしていました。後肢や肩など、筋肉の付き方は化け物じみているなあと」。最良の状態で栗東へ送り出せた。だからこそ、ダート競馬の本場に快速自慢が集う一戦でも「自信はありました」。場長はさらりと口にする。
米国G1を連勝したことで、米国競馬の年度表彰エクリプス賞短距離部門の有力候補にも挙がる。場長として「こんな馬に携われるなんて、本当にありがたいこと」と感謝する。次走以降については厩舎やオーナーサイドの判断となるが、「ここに戻ってきたら、まずは、ねぎらいのことばを掛けたいですね。そしてしばらく、のんびりしてもらえれば」。山々に囲まれた岐阜から海を渡って大仕事を成し遂げたテーオーエルビス。世界を制したダート短距離王もきっと、日本の故郷でくつろげる日を心待ちにしていることだろう。【奥岡幹浩】
◆山岡トレーニングセンター 所在地は岐阜県恵那市山岡町。若馬の育成や、現役競走馬の休養・調整を行う。約90馬房。主な利用馬にテンハッピーローズ(24年ヴィクトリアマイル優勝)やアイコンテーラー(23年JBCレディスクラシック優勝)など。