米製薬大手ファイザーが9日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンについて予想を大きく上回る90%の予防効果があったと発表し、現時点で安全性についても重大な懸念はなく、今月中にもワクチンの緊急使用に関する米当局の承認を求める見通しだと報じられています。このニュースはメディアで大きく取り上げられ、これでようやくコロナ禍前の日常に戻れる日が近づいたと期待する声も多く、厳格なロックダウンの懸念が和らいだとして株式市場は上昇していますが、そう簡単にことは進まないようです。

現在もステイホームが発令中のLAですが、より厳しい措置が取られる可能性も
現在もステイホームが発令中のLAですが、より厳しい措置が取られる可能性も

カリフォルニア州のニューサム知事は同日、会見を行って「カリフォルニア州の住民みんながワクチンを接種できるようになるのは来年のどこかのタイミングになる」との見解を示し、改めて個々がマスク着用や手洗い、ソーシャルディスタンスの確保など感染予防を徹底するよう呼びかけています。ニューサム知事によるとワクチンの供給が可能になってもすぐに一般の人が接種できるわけではなく、最初は医師や看護師ら医療関係者とファースト・レスポンダーと呼ばれる救急隊員や警察官、消防士などに限定されるため、多くの人はもうしばらく待つ必要があると説明。始めは供給量も少なく、2度の接種が必要なことなどから医療関係者らの次は持病がある人や高齢者など感染リスクの高い人が優先され、そして3番目にエッセンシャルワーカーと呼ばれる物流など必要不可欠な業種の人々や教員といった順番で摂取が可能になるといわれており、最終的に全国民に行き届くのは夏以降になるとみられています。

マスク着用とソーシャルディスタンスは来年以降も当面は継続されることになりそうです
マスク着用とソーシャルディスタンスは来年以降も当面は継続されることになりそうです

大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領もこの日、就任後の最優先課題に位置付けている新型コロナウイルス対策について演説し、来年1月の就任式まで今後数カ月間の感染拡大を抑えるために「全国民がマスクを着用すれば数万人の命を救うことができる。近隣住民のため、自分のためにどうかマスクを着用してください。マスクは政治的な意思表示ではない」と訴え、早くもトランプ大統領とは真逆のメッセージを国民に発信しています。アメリカは感染者数が累計で1000万人を超え、南部や中西部の州で感染者が急増して医療現場も逼迫(ひっぱく)する危機に直面していることがその背景にあり、トランプ大統領が選挙で敗れた今、こうした州でマスク着用義務化や再び厳しい行動制限が発令される可能性も取りざたされています。

ステイホームが完全に解除されるのはまだ半年以上先になる可能性も
ステイホームが完全に解除されるのはまだ半年以上先になる可能性も

8カ月間に及ぶ厳しい行動制限でここ数カ月は新規感染者数が減少傾向にあったカリフォルニア州も、ハロウィーンや大統領選、大リーグのワールドシリーズやNBAファイナル、NFLの開幕などに伴うスポーツ観戦で人が集まったことなどが原因でこのところ増加傾向に転じており、入院患者数もICUの利用率もあがっています。ここロサンゼルスでも週末から一気に最低気温が1桁台まで冷え込んだことで換気の悪い室内で過ごす時間が増え、ホリデーシーズンにかけてホームパーティーなど人が集まる機会も増えることからさらなる感染拡大が懸念されています。特にバイデン前副大統領の当選で歓喜に沸いた人々が、祝福のパーティーを連日繰り広げていることもあり、月末には爆発的に感染者数が増える可能性も指摘されています。

2度目のロックダウンに備えて再びスーパーで商品の品薄が起こる可能性を指摘する声も
2度目のロックダウンに備えて再びスーパーで商品の品薄が起こる可能性を指摘する声も

今月26日には感謝祭の4連休が始まり、その後もユダヤ教の祭りハヌカやクリスマスなどイベントがめじろ押しで人が集まる機会が増えることから、感染拡大を防ぎながらホリデーシーズンをいかに過ごすのかが今後の課題となっています。イギリスやフランスなど欧州でも再びロックダウンの措置が取られていますが、このままの感染者数が再び増え続ければワクチンの一般供給を待たずにバイデン大統領の誕生と共にアメリカもロックダウンされる可能性は十分ありそうです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)