ヘラブナのグランドチャンピオン決勝大会が4日、千葉・三島湖「ともゑ」で開催された。今秋、台風に襲われ、一時閉鎖もしていたが、大きなヘラと格闘できるまでに復活してきた。5地区を勝ち上がった22人と昨年王者の計23人が覇を競った。三島湖での釣りは人生3回目で、前日の試釣でゼロ匹だった神流湖代表の荒巻弘さん(59=大泉町)が手探りの中、初優勝をもぎ取った。

「前日の試釣でオデコを食らって、こりゃダメだ、と思ってバクチでブタ小屋下に入りました」。

優勝インタビューで、荒巻さんは開口一番、こう言った。釣れる根拠など何もない。人生3度目の三島湖だった。

最初は、2015年に決勝大会に駒を進めて、三島湖にぶっつけでサオを出したら3匹しか釣れずに撃沈。ブタ小屋下のもっとも「ともゑ」から離れた場所だった。横風に24尺のサオがあおられて、振り込みのコントロールが失われて何もできずに17位で終わった。

2度目は、決勝前日3日の試釣だった。評判が良かった三ツ沢岩盤中央ロープに入って底釣りをした。反応がまるでなく、ヘラの姿を見ることはなかった。

ただし、収穫はあった。過去に決勝での優勝経験もある矢嶋英雄さん(72=さいたま市)が「食わせのグルテンを使うなら硬めがいいよ」と忠告してくれた。グルテン1に対して水1・5の割合を好んでいたが、水1・2にして小さめにハリにかぶせた。アタリはなかったが何度かヘラが触ってきた。少しだけ手応えを感じた。

荒巻さんはヘラを始めたのは40年前の19歳だった。渓流も歩いたが、ウキの微妙な反応に集中するヘラ釣りの面白さに熱中した。ホームは神流湖だ。切り立った岩盤を風が突き抜け、場所選びが釣果に直接響くフィールドだ。

最初の三島湖挑戦は、緊張に押しつぶされて、ボートをこぐのに精いっぱいで、なんとなく空いている場所にしかつけられなかった。今回は慌てずに周囲を見渡すと、ブタ小屋下のゴミよけの竹のある場所がぽっかり空いていた。桟橋からもっとも近い場所だった。風裏にもなっていて、冷静に釣りができそうだった。

サオは18尺で宙釣り。矢嶋さんの忠告通り硬めのグルテンを投じた。最初から触りがあって、約1時間後に1匹目を釣った。数釣りは得意ではない。落ち着いてゆっくり投じて、ウキを通じてヘラと会話する。そんな釣りが好きだ。12匹釣れた。

荒巻さん 自分の釣りに徹することができた。気軽にアドバイスしてくれた矢嶋さんに感謝です。フランク永井みたいでかっこいいなぁ。

決勝の前半戦を引っ張ったのは3位の片岡哲博さん(59=匝瑳市)だった。

片岡さん 朝10時までは順調だった。後半はヘラが上ずったまま。伸びなかったねぇ。

入れ替わるように午前10時からアタリを連発させたのは準優勝の石下貴之さん(47=江戸川区)だった。

石下さん 13尺の両ダンゴ。振り込みは底よりちょい上で、流れに乗せて底に引っ掛ける感じ。あと30分あればね。

決して三島湖の状態はよくなかった。度重なる台風の影響で、水は濁り、ヘラも落ち着いていなかった。しかし、700グラムから1キロを超える巨ベラは回遊している。「ともゑ」の森和人店主は「大変な時期もあったけど、三島湖は徐々に回復してきている。でも、かなり苦戦するとは思っていたけど、各地区の猛者はちゃんと結果を出してくる。大きな秋ベラはこれから、という感触をつかめた」と話した。

慣れない場所で、自分の得意なスタイルをつかんだ荒巻さんは「厳しかったけど、楽しかった。私は釣り好きというより、ヘラ釣りが大好きなんですね。あらためて三島湖に教わった気がします。これから4時間かけて、ゆっくり群馬に帰ります」と優勝賞品をたくさん乗せた車に乗り込んだ。【寺沢卓】

▼ルール 猫打橋より下流のダムサイト立ち入り禁止手前までが競技範囲。ヘラの総重量審査で、同重量の場合は、匹数の多い方が上位。さらに同匹では、年齢の高い方を上位とする。午前5時に受け付けを開始し、同6時30分にともゑ桟橋からスタート、午後2時帰着&検量。優勝者の荒巻さんには来年決勝への出場権が与えられた。

▼宿 三島湖「ともゑ」【電話】0439・38・2544。ヘラは電話、ブラックバスはインターネットでボート予約も受け付けています。