ヤリイカが乗り始めた。千葉・勝山「宝生丸」(高橋栄船長=72)では、2月に入ってスタートさせた。例年よりも型が大きく、長さだけならビールの大瓶に匹敵するほどだ。洲崎~野島沖で群れに当たれば、多点掛けも夢ではない。身が柔らかく、食べてもおいしい。刺し身や姿焼きのほか、サトイモや大根などと煮ても良し。お酒のおつまみ、ごはんのお供を調達しにいらっしゃい。

大船団が集結していた。野島沖に30隻あまりの釣り船がやってきた。ヤリイカの大きな群れがいるらしい。「(海底まで)水深200メートル、(ヤリイカの遊泳層は)底から10メートル」。魚探の反応を見ながら、高橋船長がマイクで細かく指示を出してくれる。

150号のオモリを海中に投げると、11センチのプラヅノが投入器から飛び出していく。海中にサオの穂先を突き刺して垂直に落とし込みながら、電動リールの道糸を左親指で押さえる。仕掛けを素早く沈めるためだ。

着底後、たるんだ糸を少し巻き、小さくソフトにサオをシャクる。スルメイカを釣るように、大きく豪快にサオをアオって乗せる必要はない。50センチ刻みに巻き上げ、ゆっくり手首を返す程度にツノを揺らして誘う。ツノが、イカにとって好物の小魚に見えるらしい。文字通り、触手を伸ばしてツノを抱えると、「グン」と手元に重みが伝わった。

船内の至る所で獲物が上がっている。「ヤリイカのアタリに生命力を感じました」。左トモ(最後方)で18匹確保の、内山ちえさん(43=千葉市)が笑顔で取り込んだ。「30年通っているけど、例年よりもサイズが大きいですよ」。右ミヨシ(前方)2番目の浅田金誉さん(61=千葉市)も笑いが止まらない。

数を伸ばすコツもある。「1匹乗ったと思ったらサオを止め、道糸をたるめたり、シャクったりせず、5秒ほど待ってください。追い乗りしますよ」(高橋船長)。たるませたりシャクったりすると、イカが違和感を感じてせっかく抱いたツノを離してしまうからだ。引き上げる際には、身切れさせないよう、たとえ時間がかかっても電動リールを低速~中速で巻くといい。獲物が乗った重みを感じつつ、サオを両手で持ってじっと待つ。ロッドキーパーに置くと、やはり違和感を感じさせてバラシの原因になる。

右トモから3人目、ヤリイカ初挑戦の山口真菜さん(34=千葉県松戸市)は終盤、3点掛けを達成した。これで10匹ゲット。「おいしいおかずが調達できました」。右ミヨシで4年通い続けている甲山晶さん(43=千葉市)も多点掛け多数。左ミヨシ2番目で宝生丸初乗船の坂間剛太さん(32=神奈川県平塚市)も、最後の流しで4点掛けを見せ、「ズン、ズンと次々に乗る重みが伝わって楽しかった」と満足そうだった。

30年以上前は物干しのように長い2・5メートルほどのサオを使い、大型の両軸受けリールで道糸を手で巻いていた体力を要する「ガテン系」の狙い物だった。電動リールの普及、釣り船のバッテリー搭載などの進歩で、誰もが楽しめるようになった。

例年よりも1カ月から1カ月半ほど遅く始まったヤリイカ釣り。「潮温が高い上、流れが速かったため、仕掛けが下ろせなかった。ここへ来て潮が緩くなり、東京湾口から南房にかけて狙えるようになった。群れが大きく、活性も高めが面白いですよ」(高橋船長)。サオ頭で50~70匹は乗せている。ツノ7本が基本だが、手慣れた人や腕に自信のある人はツノを増やしてもいい。ここでは、「イカんともしがたい」と漁師泣かせの「イカ不漁説」など、どこへやらだ。

◆船宿 勝山「宝生丸」【電話】0470・55・2777。出船は午前6時。1万円。同じ出船時間で午前マダイも。こちらは3キロオキアミ付きで1万1000円。女性はどちらも2000円割引き。このほか、各種割引もある。

※宝生丸のほか、富浦「共栄丸」【電話】090・7244・0460、金沢八景「太田屋」【電話】045・782・4657、久里浜「大正丸」【電話】046・835・0076では、3月14日から5月24日まで「Tokyo bay マダイダービー」を今年も開催する。詳細は各宿に電話でご確認を。