吹き荒れる春風に「あれっ、冬ってあったの?」と感じている人も多かろう。ならば山梨・富士五湖のワカサギで冬体験してみよう。精進湖「湖畔荘」では、10センチ超と大きくて、しかも抱卵した個体と遊べちゃう。フライにしたら…もう絶品。

精進湖はかつて全面に氷が張ってワカサギ釣りだけでなく、アイススケートに興じる家族連れでにぎわった時代もあった。

「もう、そんなのは半世紀も前の大昔だね。2年前は雪も積もって寒かったから一部結氷したけど、全面には張らなかったね。特に今シーズンはあったけぇね」と湖畔荘では話す。

午前7時30分。湖畔荘1階の食堂で朝ご飯セット(700円)を食べていた。ナメコのみそ汁、もうずっと味わっていたい。なぜなら、食堂の窓から見える外は、しんしんと降る雪がやむことがないからだ。

静岡市から訪れたヘラブナ師2人は「風はないねぇ。でも、この雪は厳しいなぁ。湖はきれいだね。目に焼き付けたから、帰るわ」と放流バッジを購入しただけで帰路についた。雪はやまず、湖畔荘の対岸の山肌が白い雪化粧に覆われていった。

意を決して、取材に同行してくれた「海のおじさん」こと海洋環境専門家の木村尚(たかし)さんと湖に出た。木村さん、数多くの釣り経験を持つが「ワカサギ釣りは人生初なんです。どうやって釣るんですか?」と困った表情をみせた。

予想外の言葉にタコボウズ記者(寺沢です)、たじろいだ。手元で細かいサシや赤虫のエサ付けはどうなんだろう? この寒さでどこまで耐えてくれる? ボート、こげるのか? 一気に押し寄せる不安を振り切って「とりあえず、釣りしましょ」と引きつった声で言葉を返した。

「劇的に湖上からの景色は美しいですね。山は気持ちいい」と木村さん、やや安心したが「この雪さえなければ」とフードを深めにかぶり直した。

水深は18メートル前後。ワカサギは底付近に群れが回遊しているようだ。7本バリ仕掛けでオモリ3号。オモリを底から離さず、糸を緩め→張って→また緩める。誘いはその連続だ。

サオ先がブルンと揺れて止まらなくなる。ワカサギの掛かった合図だ。木村さんは30分で3匹、寒さに耐えられずに食堂のストーブ前に退避した。残されたタコボウズは2時間粘って25匹。群れの回遊に左右されるが1番上のハリでも掛かった。気長にのんびり待つ。サオ先の変化に気を向けながら白くけむる山を眺める。寒さが少しずつ遠のいて、絶景とサオ先のプルルンで満足できると感じた。

釣れたワカサギはすべて10センチ以上。デカい。食堂に戻って、計28匹全部をフライにしてもらった。かなりの迫力だ。ソースをかけて、ガリ…あっ、抱卵していた。子持ちワカサギだった。でっぷりと太い。木村さんは「おいしい。衣をつけてフライで揚げたら、15匹もあれば大満足ですよ」と笑顔をみせた。

まだ、精進湖のワカサギはビッグサイズで勝負できそう。雪が降るかもしれないが、大自然に抱かれて気持ちのいい釣りを期待していいですよ。【寺沢卓】

◆精進湖「湖畔荘」【電話】0555・87・2003。出漁時間は、午前6時~午後4時、4月13日から10月30日まで禁漁となる。遊漁料金は600円、ボート料金は3000円、ヘラブナ放流バッジ所持者はボート500円、入漁料100円の割引あり。食堂ではカレーライス、カツ丼、親子丼が人気でーす。