神奈川・小田原沖のカマス釣りがピーク期を迎えようとしている。例年4月中旬まで漁期で、50センチの大型も掛けられる…そう、「釣る」というより「掛ける」が正解だ。独特の釣法のため、ちゃんと説明しないといけない。お父さん、脂の乗ったカマスを釣る紙面講座、集中してくださいネ。

これはカマスの「不意を突く」釣りになる。

出漁するのは小田原早川漁港。「弘美丸」で海に繰り出していく。

使うのは、フグ釣りで使うカットウバリ。3本や4本のイカリ型のタイプになる。150号のオモリをぶら下げる胴突き仕掛けだ。その日によってタナ(魚の泳層)は高低のズレはあるが、海面から120~180メートルでカマスの群れは動いている。通常だと4月中旬まで狙える獲物となる。

まずは、船長が魚探(魚群探知機)で丹念にカマスの群れの動きを見定める。船長から「130~140メートルを中心に探ってください」などと船内スピーカーで指示ダナが告げられ、仕掛けを急速落下させる。150号のオモリをドボン。

胴突きの間隔はそれぞれ。最近は枝スは10センチ以内と短くし、40~50センチピッチで3~6本ぐらいがいいようだ。幹糸は8号前後で、枝スは5~6号。市販されている仕掛けはないため、乗船する釣り人は自作で乗り込んでくる。スナップのついた3方向のサルカンにそのままカットウバリをつけるケースも有効のようだ。

あれ、エサは?

エサは付けません。あくまでカマスに気付かれずにカットウバリを刺しにいく。つまり、こちらの気配を消す必要に迫られる釣りなのだ。エサを付けたり、コマセをまいたりすることで、魚に「こっちを向かせる」のが本来の釣りだが、カマスは「あっち向かせてホイ」的な要素を含む。

船長から指示されたタナを中心に仕掛けを高速で落とし、そのタナが過ぎたら、電動リールのレバー入れてハイスピードで道糸を巻き取っていく。上から落として、下から突きあげる-そんなイメージを持ってもらいたい。

ここで重要になってくるのが、仕掛けを「落として→上げる」頻度だ。

人通りの激しい歩道上で、金属バットを振り回している人がいたら、あなたはどうしますか?

ちょっと近づきたくないですよね。これはカマスも同じ。奇妙なハリの連続がものすごいスピードで上下動していたら「これ、危ないな」と避難する。あなたはこう思うはず「おかしいな、誘っているのに無反応だ」。その上下動こそ、釣れない原因なのです。

船長がにらめっこしている魚探では、その部分だけ反応が消えていってしまう。この現象を船長は「穴があく」と表現している。

冒頭で書いたが「カマスの不意を突く」ことが重要なのだ。こちらの気配を消すには、何度も往復してはいけない。落として上げたら、30秒から1分ほど指示ダナのやや上で待つ。カマスを安心させて、群れが濃くなるのを待つ。

ためて待つことで群れが復活する。リールのクラッチを開放する。150号のオモリが弾丸のように落ちていく-カマスの群れのど真ん中に。ガツンというアタリを感じたら、すぐに大きくサオを振り上げて合わせて、道糸を巻き取る。

取材では人気番組「ザ!鉄腕!DASH!!」に出演する海洋環境専門家の木村尚(たかし)さん(63)にサオを振ってもらった。実は昨春も挑戦していて、ボウズ(釣果ゼロ)に終わっていた。1年越しのリベンジ戦だった。

最初に釣れたのは、なんと3キロ超のトラフグだった。本来のカットウバリで釣れる獲物にありつけた。ラッキーな外道だ。フグ調理免許を持つ知人にさばいてもらって「おいしくいただきました」(木村さん)とご満悦だった。

肝心のカマスは8匹だった。

木村さん やはり、カマスの不意を突くんですね。電動リールを高速で巻き上げて下から攻めるより、落として上からグサリ、これがヒットしました。なので、落としているときに集中してください。これは面白い釣りだ。

今は群れが散らばっているけれど、まだ、チャンスは残っていそう。小田原沖でカマスを不意打ちしてみませんか?【寺沢卓】

▼小田原「弘美丸」【電話】090・8682・8573。カマス乗合船は午前6時出船、午後1時30分納竿、氷付きで1万円。