昨年末から、兵庫・明石市の「小松乗合船」(日刊銀鱗倶楽部加盟店)で行われていた「第14回メバル3匹合計長寸大会」が4月30日に終了し、上位入賞者が決まった。優勝したのは31・8、31・8、30・8センチ合計94・4センチをそろえた浦川隆行さん(明石市)で、2位の高橋貴和さん(神戸市)に4ミリ差で逃げ切り、見事、2度目の優勝を飾った。3位には昨年の覇者・船山剛隆さん(神戸市)が93・4センチで入った。今大会は上位3人が歴代記録の93・2センチを超えており、尺メバルが46匹も上がる大型ラッシュ。中盤、後半戦で順位が大きく入れ替わるバトルもあり、大いに盛り上がった。

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「久々に優勝できてうれしいです」。短い言葉だったが、大ベテランの浦川さんが2つ目の優勝トロフィーにやさしくキスをし、目尻を下げた。明石沖のメバル釣りに魅了されて43年。シーズン中は毎週、小松乗合船に通い、テクニックを磨いてきた。今では指導者として尊敬される存在で、多くの人が浦川さんの教えを受けている。そんな師匠の快挙をたたえる温かい拍手が表彰式で湧き起こった。

メバル釣りの魅力はスリリングなやりとり。「浅場(水深20~30メートル)で底から5~6メートル浮いているメバルを釣るのが一番面白い。浅いところは糸を細くしないと食わないので細仕掛け(0・6号ハリス)で大型メバルの突っ込みをいなす、やりとりがたまない。こんな面白い釣りはないですよ」と目を輝かせる。

勝因はメバルが嫌う光りものを一切使わない6本針仕掛け(別図)。ビーズではなくチチワでエダスを結び、オモリも使い古したものを使うなど、目のいいメバルに見抜かれないように工夫を凝らしている。釣り方のコツは「時合を逃さずにたくさん釣り上げ、大型と出合えるチャンスを増やすこと。指示ダナまで仕掛けを引き上げたあと、竿をゆっくり下げてハリスを開かせるイメージの誘いで数を伸ばしています」と話す。

今後の目標はメバル釣りの魅力を多くの人に伝えていくこと。「近年、メバルを釣る若い人が少なくなっているので、明石海峡のメバル釣りの面白さを広めていきたい。そんな思いで今年、私のテクニック、仕掛け集をユーチューブなどで全て公開しました。参考になれば幸いです」。浦川さんとメバル釣りを愛する弟子たちのアツい思いが新たなファンを増やしていく。【近江康輔】

◆2位高橋さん、海神社の御利益で躍進

終盤に猛チャージをかけた高橋さんが、7回目の挑戦で初の上位に入った。4月23日時点で7位だったが、24日に31・1センチ、25日に32・1センチと30・8センチを仕留め、総入れ替え。トップに迫る94センチをそろえた。毎回、10位以内に入るも上位入賞はなく、今年こそはという思いで神戸・垂水の海神社に必勝祈願をし、お守りを身につけて釣行を重ねた。「海神社の御利益がありました。後半に力を発揮させてもらい、感謝しています」とにっこり。ほかにも、上位に入った勝因が2つあった。竿を3メートルから3・9メートルに替えたことで、尺メバルのばらしを激減させ、メバルのタナを広く探れるように6本針仕掛けを使うことで釣果を伸ばした。

◆3位船山さん、旧暦で尺メバル6匹!

「昨年の優勝がビギナーズラックではなかったことを証明できて良かった」。船山さんが連覇を逃すも3位に入り、満足気に話した。もともと、冬の間は磯でグレを狙うフカセ釣り師だったが、面白いからやってみろと言われ、メバル釣りを始めて2年目。細糸で突っ込みに耐えるやりとり、食わせるまでの難しさが「磯釣りに似ているところもあってどっぷりはまってしまったよ」と笑う。今年は旧暦や潮流アプリも駆使し、大型がよく出る日に狙いを絞って釣行。「旧暦の7日潮と22日目がいいみたい。その結果、昨年は尺メバルが2匹だけだったが、今年は6匹も釣れた」と話す。来年は「メバル3匹合計長寸大会」が15周年を迎えるメモリアルな年。目標はずばり「2勝目です」ときっぱり。記念大会制覇へ向け、船山さんの鼻息が荒かった。