<フィッシング・ルポ>
静岡・興津川は、やっぱり天然アユとの駆け引きが面白い。9月17日、興津川で「2017日刊スポーツ・フィッシング・サーキット」アユ釣り大会が開催される。大会を前に3年前からアユ釣りに目覚めたスーパー中学生釣り師で俳優の佐野代吉くん(15)が初挑戦した。あいにくの雨、ただ、8月でまとまった降雨は初めてだった。恵みの雨の中、引きの強い天然アユは釣れたのか?
大会会場となる大網。車も通れるつり橋が目印で、興津川でも友釣りの優良ポイントのひとつだ。代吉くん、アユ釣りは3年連続で茨城・久慈川で鍛えてきた。川の中の石を見て、アユがどこにいるのか、そしてアユをどうコントロールするか、体に腕にたたき込んできた。それでも初めての興津川にやや戸惑った。
代吉くん 浅いですね。こういうの「チャラ瀬」っていうんですよね。しかも、アユがいっぱい見える。これ、全部釣っちゃっていいんですか?
怖いもの知らずだ。魚を目にすると、目の色が変わる。釣り師としての本能に火がついたようだ。
今回の取材は8月7日。台風5号が列島を抜けていく前日で、夜明け前には静岡県にもどんよりとした雨雲が迫っていた。興津川をよく知るアユ師の横山愛治さんがサポートしてくれた。横山さんは「川見をしたが、やや渇水気味で、結局は大会会場の大網が狙いどころに感じる。代吉くんとは初めて会うが、どの程度やるのか、見せてもらおう」と目を細めた。
午前8時。やや遅い入川。すでにセミがけたたましく鳴いていた。空には青空がまだ残っていた。ただ、上流方向の山側に目を向けるとレースのカーテンのような雲に覆われていた。「もって午前中かな」と横山さんがポツリ。雨が近い。川には緑の藻がゆらゆらと揺れていた。
横山さん あの緑の周辺にはアユはいない。それと泳ぐアユがいるけれど、群れになっていて縄張りを意識している感じでもない。夏のもっとも難しいパターンかもなぁ。
ドッキリすることをつぶやく。聞こえなかったのか代吉くんは瞳をキラキラさせていた。つり橋の上から川をのぞいて「うぉ~、あれ、アユだね。いっぱいいる。よし、釣るぞぉ~」とはしゃいでいた。
川に入る。つり橋より下流。横山さんのアドバイスで流心を外して、やや緩やかな瀬にオトリを泳がせる。岩の後ろから影がスーッ、と寄ってきて-離れた。以後、その繰り返しだった。群れるアユは縄張りを持たない。アユにやる気がない。ピンチだ。
「夏のもっとも難しいパターン」。このことなのか。元気に泳ぎ回るアユ。しかしオトリを追わない。何度かあたってくるが、掛からない。代吉くんも場所を少しずつ変えながらサオを立てたり、倒したりする。アユは振り向いてくれない。雨が降ってきた。強く川面を打つ。それでも釣れないアユの泳ぐ姿はしっかり見えていた。
横山さんがつり橋下で、キャッチ。天然アユだ。「ポイントとして見逃されがちなんだけど、アユの反応のシブいときは橋の下がいい」と教えてくれた。その横山さんの釣りあげた天然アユを受け取り、オトリを交換し、つり橋の下流に代吉くんが入った。
オトリを投入して30秒。あっさり釣れた。やはり天然アユだ。どうやら天然アユには反応する。
代吉くん やったぁ~、天然には天然なのか。アユ釣り、奥が深いなぁ。うれしいー、たのしー。
釣りを続ければおそらく追釣できたかもしれないが、川が増水してきたため、安全を考慮して終了。なんとか天然アユに巡り合えた。
横山さん 雨が入って、川も変わるかもな。群れになっていたアユも縄張りを持つかもしれない。興津川はこれからだよ。
来月17日の大会前に天然と遊べる興津川をのぞいてみようか。【寺沢卓】