宮城・松島 浅瀬で伝統釣法、ハゼぜ~んぶ20cm超

ハリがなくてもガッチリ食い込んで、こんなアクロバティックな動作をしてもハゼは離さない

 絶景の宮城・松島でハリを使わないハゼ釣り、やってみませんか? カキイカダを組む水深1~1・5メートルの浅瀬で「数珠(じゅず)釣り」という伝統釣法で、20センチ超の落ちハゼと遊べる。ただ、ハリを使わないので、バレないように抜き上げるタイミングが難しい。ハゼと遊ぶつもりが遊ばれてしまう。当地では、生きたままを炭火でじっくり焼いて、正月に食べる雑煮のダシに使うという。

 あまりの絶景に松尾芭蕉は「松島や ああ松島や 松島や」としか俳句を詠めなかったという。ただ、これは諸説あって、芭蕉は絶景に見とれて句すらひねれなかった、とも。訪れたのが旧暦5月9日(新暦6月25日)、さて芭蕉が今の時期に松島にいれば、季語に鯊(はぜ)を入れることができたかも、無念じゃ。

 前置きが長くなってしまったが、松島のハゼは、ハリを使わない数珠釣りとなる。

 なぜか?

 ハゼの釣り場は水深1~1・5メートルの浅場だ。底は砂地だが、潮通しからやや離れた緩やかさもあって、海の水草「アマモ」が群生している。そこにハリの付いた仕掛けを投入すれば、すぐ根掛かりして、ハリが海中に残ってしまう。環境保全を考えた、地元の釣り人らの知恵がハリのない数珠釣りを生み出したのだ。

 今回は塩釜「えびす屋」が20人限定で、釣ったハゼを炭火で焼くまでのツアーに参加した。日本テレビの人気番組「ザ!鉄腕!DASH!!」に出演する海洋環境専門家の木村尚(たかし)さんも名前を連ねていた。

 そもそも釣ったハゼを何で焼くのか?

 釣ったハゼは生きたまま持ちかえる。肛門にキズを付けて、腹部を押すと簡単に苦い内臓を除去できる。竹串を口から入れて骨に沿ってさし込むと真っすぐになり、生きたまま焼くのは、炭火で背中、腹の順にじっくり焦がしていくと、ヒレ全部がきれいに立ったままになる。そのヒレからおいしいダシがとれるのだ。

 この焼いたハゼはワラで結んで、かつては囲炉裏(いろり)の上につるしてさらに水分を飛ばして、正月の雑煮のダシと具に使った。新年を彩るハゼ釣りなのだ。

 さて、問題の釣り。

 ステンレスの細い鉄棒にアオイソメを全部串刺しにする。鉄棒にはタコ糸がつながっていて、アオイソメをそのタコ糸に移す。タコ糸は25センチ前後で両端をちょっと残すようにして4~5匹のアオイソメを通す。このタコ糸セット2本を寄るように絡ませて、数珠のように太くする。両端を結んで3号ぐらいのオモリを装着して、サオのハリスに結んで仕掛けは完成だ。

 塩釜市の籬(まがき)港から船で20~30分がポイントで、周囲には三陸カキのイカダが並ぶ。目を凝らせば底が見えそうな浅瀬だ。サオに巻き付けたハリスを調整して一定にする。状態としては延べザオと同じ。軽くトントンと誘い、ハゼの食い気を待つ。「おおおお」と背後の木村さんが絶叫する。バレた。何しろハリがないので、強引に合わせると口を離してしまう。

 ハゼのあごのギザギザで引っ掛けるイメージだ。イシガニ、ワタリガニ、シャコなども掛かる。元気なハゼはのどまでのみ込んでしまうが、何しろ食い気が立っているので、アオイソメを引きちぎっていく。少しずつ数珠が「やせて」いく。ハゼとの攻防戦。これは楽しい。小さいボートなので乗っても7~8人。ワイワイガヤガヤとおしゃべりも楽しい。

 結果、初心者で非力な西原佳江さんが14匹でトップ、木村さんは惜しくも9匹。それでも「すべてが20センチ超。すばらしい。私は4年目だけど、この釣りは楽しいですね。もちろん、来年は10匹以上を狙いますよ」と木村さん。

 9月の彼岸過ぎから釣れ始める。えびす屋では、漁期が終了してしまったが、松島磯崎「善松丸」では11月中旬ごろまで狙える。秋に芭蕉がサオを持っていれば、おそらく名句が生まれていたろうに。【寺沢卓】

 ▼船 今ならば松島磯崎「善松丸」【電話】022・353・2594。4人までの仕立船で、エサ付きで1人6000円。内海松夫船長は「11月のハゼは大きいし、柔らかな誘いで乗ってくるので、いいよぉ~」。塩釜「えびす屋釣具店」【電話】022・362・2220。漁期が終了しているので、また来年よろしくお願いします。料金、定員などは要確認。

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