東京湾・野島 ただ1人クロダイ2匹、山田さん初V

野島の防波堤でクロダイを狙う釣り師たち

<フィッシング・ルポ>

 関東のクロダイ釣り師が腕を競う「第13回野島杯」が5日、東京湾・野島「村本海事」(関口真一店主=55)で実施された。

 当初は7月29日に予定されていたが、台風12号の影響で1週間延期された。決して「いい」とは言えないコンディションの中、42人が参加。総匹数で争った。午後の下げ潮時にただ1人、2匹を連続して釣り上げた山田邦彦さん(46=横浜市)が、初優勝を飾った。

 「大物クロダイを釣って、勝つ」。午前6時30分の出船と同時に、参加者たちはそんな思いを抱いて、ここはと思うポイント目指して乗り込んだ。上げ潮時で、朝一番は最も釣れるはずの通称「モーニング・タイム」。偏光グラスで海中を見れば、目指す獲物が泳ぐ姿すら見える。にわかに、色めき立った。

 3位に入った湯浅尅伍(かつご)さん(87=東京都中央区)は、赤灯で午前7時の開始と同時に仕掛けを投入し、45・2センチを仕留めた。釣り仲間の佐藤達夫さん(66=東京都江東区)とじゃんけんで場所を決めた。勝って選んだ横浜港寄りの角で掛けた。「アタリはあれだけ。負けてたら、3位はなかった」と笑った。ハナレではやはり1投目で、「TEAM HONMOKU ANGLERS」の嶋崎正人さん(48=川崎市)が40・5センチを上げた。

 ほかの釣り師たちは思わぬ苦戦を強いられた。アタリはあっても、エサのカニや貝類を割られただけ。掛かったかと思えばフグ。「クロのスイッチが入らない」と嘆く人が目立った。肩透かしの原因は潮温を下げる南風。絶えず吹いて、海面を波立たせていた。クロの活性が低くなり、食いも渋くさせていた。

 「下げ潮時が勝負」。前半の不調に、誰もが腹をくくった。当日は小潮で、満潮が午前10時37分。午前10時30分に釣り場移動が認められており、リセットできる。潮も動き始める。一発逆転のチャンスを狙っていた。

 優勝した山田さんは、この潮時を逃さなかった。逆風を突いて沖目に振り込んだ。午前11時前、着底を確認しようとゆっくりサオを上げて聞き合わせたところ、33・8センチの1匹目を確保した。これで優勝争いに加われると思った山田さん、沖目を攻め続けた。「風が当たる分、クロの警戒心が薄い。反対側は北になるので、太陽で人の影が入ってクロから警戒される」と考え、沖目を狙って粘った。

 正午前、45・7センチを追加した。「いつもより3~4秒待つイメージで、時間を与えてエサのツブ(イガイ)を十分食わせる釣り方がうまくいった」。クロダイ歴15年、昨年のこの大会では大物賞に輝いている。普段は週末に横浜市内の鳥浜や、千葉県木更津市などに通う。「釣り人が多く、少ない釣り場を選んでサオを出す経験が生きたのかもしれません」と、逆転初Vの喜びをかみしめた。

 2位で大物賞も確保した佐藤晃三さん(50=千葉県印西市)は、初参加。仲間の藤井雄一さん(43=千葉県八街市)がくれた小さなツブが集まったダンゴ状のエサに替えて、唯一50センチ超えとなる51・3センチを仕留めた。まさに一発大物。「競輪選手を引退して6年、久々に表彰してもらいました」。初出場初優勝は逃したが、レースで鍛えた勝負勘で一気にまくった。

 野島防波堤海津クラブの田中正司名誉会長は、「今大会は、釣果が全部で7匹と厳しかった。厳しい条件だからこそ運が左右するし、腕も問われる。好機を逃さなかった入賞者に敬意を表したい」と締めくくった。【赤塚辰浩】

 ◆概況 今年1~6月に野島防波堤で釣れたクロダイは、455匹。「当たり年」と言われた昨年は1071匹と特殊だったが、15年は464匹、16年は494匹だから、例年並みといえる。7~12月は15年が849匹、16年1224匹(17年1502匹)。「ここから割り出せば、平均して1000匹と釣れる」(田中名誉会長)。暑さが収まり、北東風が吹いて潮温が安定すれば食いが立つ。これからが本格的なシーズンだ。

 ◆宿 野島「村本海事」=【電話】045・781・8736。4~9月の渡船は、朝便7時発、昼便12時発、夕方便15時45分発、土曜のみの半夜便(20時30分沖上がり)がある。料金は日中(7時~日没)の高校生以上が4000円、女性と中学生以下2000円(小学生未満は無料)、同居家族4人までのファミリー6000円。半日は高校生以上2500円(女性と中学生以下1000円)、15時45分~日没2000円、半夜(15時45分~20時30分=土曜のみ)3000円。半夜の延長は1000円加算。各防波堤とも2人以上。