山口浩平さん涙の初出場V G杯争奪アユ釣り選手権

優勝した山口さんは一番高い場所から優勝カップを高く掲げた。左は準優勝の佐藤さん、右は3位の藤井さん

<フィッシング・ルポ>

初出場で優勝、亡き恩師に涙の報告-。第42回G杯争奪全日本アユ釣り選手権が今月5~7日、高知県仁淀(によど)川で開催された。全国の予選を勝ち上がってきた43人と、昨大会上位3人などシード&推薦5人が加わった計48人で覇を競った。岐阜・長良川予選5位の山口浩平さん(46=愛知・豊田市)がマイペースを貫いて、初出場にして優勝を奪い取った。

亡き恩師・鈴木俊行さんの話題に触れたところで、山口さんの目から涙がこぼれ落ちた。地元愛知の矢作川で、アユ釣りを子どものころから仕込んでもらった師匠だ。4年前に他界した。自分は動かずに、上流の石の周辺からオトリを使って、アユをおびき寄せる。自然の流れの中で川と同化して「釣りを楽しめ」という教えが、体にたたき込まれている。

一緒に出場した羽田野仁さん(59)も、山口さんと同じクラブ「中部(ちゅうぶ)らりん」に所属している。鈴木さんがつくったアユ同好会だ。涙にむせぶ山口さんをみて、羽田野さんも「さぞや鈴木さんも…。うう、生きているうちにお見せしたかった」と声を詰まらせた。

G杯は初出場になる。高知入りする直前、過去G杯を3度制している地元のあこがれの先輩、小澤剛さんに相談した。直接会って「ちょっと古いけど控えで持っていって」とサオを渡された。05年に小澤さんがG杯で準優勝した時の賞品で、「G杯準優勝」が刻印されていた。小澤さんの「優勝してこのサオを超えろ」とのメッセージが込められたようだった。1度もサオケースから出さなかったが、「心強いお守りになった」と山口さんは話した。

小澤さんのオトリを引いてコントロールする積極性と、恩師の自然と同調する教えのおかげで、大舞台でも緊張せずにマイペースを保つことができた。来年は予選がなく、シード出場で王者として挑むG杯になる。「場所は決まってないようですが、いつもと同じ気持ちで臨みたいと思います」と力を込めた。【寺沢卓】

▼G杯とは 釣り具総合メーカー「がまかつ」が主催する釣りの全国大会の総称。アユ、ヘラブナ、投げシロギス、磯チヌ(クロダイ)、磯グレ(メジナ)という他者の力を借りずに自分の戦略だけで魚と対峙(たいじ)する釣り5種に限定される。アユは山形・小国川、栃木・鬼怒川、群馬・神流川、神奈川・相模川、静岡・興津川、富山・神通川、岐阜・長良川、和歌山・日高川、鳥取・高津川、高知・仁淀川、大分・三隈川の11河川から43人が通過し、昨大会上位者3人とがまかつ推薦2人の計48人が決勝地の高知・仁淀川に集結した。

▼ルール 5日は予選組み合わせ抽せん、6日は予選。12人がグループになって4組に分かれる。それぞれ90分×4試合を行い、10匹(オトリ2匹込み)の早掛け勝負。トップが12点、2位11点、3位10点…。オトリのみ2匹は0点。予選4試合の合計で各組2位までが決勝トーナメントに進出できる。1対1の決勝トーナメントは最終日7日で、匹数の多い方の勝ち、同数の場合は総重量勝負。準々決勝、準決勝は各前後半45分計90分。決勝、3位決定戦は前後半60分計120分。

<決勝T進出者ひと言>

◆準優勝 相模川1位・佐藤豊文さん(41=群馬・渋川市)もともとフライアングラーです。タイラバもエギングもやる。G杯は初出場だったけど、とても面白かった。力をつけて来年また戻ってきます。

◆3位 三隈川3位・藤井夢人さん(35=島根・益田市)G杯はチヌで日本一になった。アユもそのうち取る。今回は1匹の重さを知りました。

◆4位 日高川5位・村田充弘さん(57=大阪・高槻市)釣り以外の趣味はスキーとマラソン。アユ釣りの体力作りのためです。

◆5位 仁淀川2位・藤原無我さん(35=高知・越知町)あごヒゲはなんとなく今年からですね。別にゲン担ぎじゃないッス。

◆6位 昨年3位・楠本慎也さん(44=和歌山・田辺市)天然遡上(そじょう)が多い。大きくはないけどいい引きですよ。

◆7位 相模川3位・伊橋真一さん(46=東京・八王子市)自分のスタイルはその川の特徴をつかんでいかになじむか、ですね。

◆8位 興津川1位・平井幹二さん(68=神奈川・相模原市)G杯のために老眼鏡を作った。鼻カンを通すのが早くなったね。