＜釣りをしようよ　プルルン体験隊＞

関東各地区で「マダイ秋の珍事」が発生している。乗っ込みの絡む春は巨ダイが目立ち、生まれて順調に育つ秋は数釣りが楽しめる。しかし、今秋、大きなマダイが各地で姿を見せている。千葉でも同じような現象が起きている。そこで9日に南房・吉浦「八平丸」、10日は内房・富浦「共栄丸」でマダイ旅をしてきた。堤防が得意だけど、船経験の少ないおじさん釣り師に挑戦してもらった。

手塚宏さん。55歳。都内在住で釣りは大好き。子どものころから釣りに親しみ、かれこれ47年サオを握り続けている。ただ、船酔いが心配で、堤防釣り専門になってしまい、船釣りの経験はあまりない。

手塚さん　堤防釣りはどこにでも行きますね。それこそ静岡は伊豆半島を車でぐるんと回って、気の向くまま風の吹くまま、温泉巡りをしながら楽しんでます。船ですか？　波に揺られるのが、どうも苦手で。でも、マダイが釣れているということなので、船に乗ってみようと思いました。

春の大きさ、秋の数。マダイにはそんな定説がある。ただし、今秋は様子がちょっとおかしい。沼津・久料「魚磯丸」では9月以降8キロ台の巨ダイが連発している。コマセ釣りではなくテンヤを使う千葉・飯岡「梅花丸」でも5～6キロ級が連日釣果としてあがっている。

手塚さん　堤防だとマダイは高嶺の花なんですよ。

25年前、何が釣れるか分からないまま、一生懸命コマセをまいて糸を垂れていた。5時間粘って何も釣れず、あとから来た老夫婦に場所を譲った。その老夫婦は購入したばかりと思われるリールとセットになった安いサオセットを握っていた。手塚さん、ぼけー、と後方で眺めていたら、その老夫婦、5分後ぐらいに2キロ前後のマダイを釣って、会釈をして帰っていった。

手塚さん　オレにはマダイは縁がないもんだ、と確信しましたね。

そんな手塚さんに25年前のリベンジを果たしてもらおうと、今、千葉で絶好調の吉浦「八平丸」に9日、富浦「共栄丸」には10日に乗ってもらった。船釣りのマダイ船、もちろん手塚さん初体験である。

吉浦港には午前6時集合。ちょっと早め、2時間前に到着した。見上げると満天の星空が出迎えてくれた。

手塚さん　すごいなぁ。カシオペア座を探すのが大変なぐらい星だらけ。ちょっと早めの港。あり、ですね。

この星空、吉兆かと思ったが、手塚さん、マダイはボウズ（釣果ゼロ）に終わってしまった。吉浦沖は水深30メートルまでの海域での勝負になる。8日の潮温は22度、9日は23・3度だった。八平丸・鈴木篤幸船長は「20度を切らなければ、浅い海域でマダイを狙い続けることができる。今年はまだまだいけそう」。狙うタナ（魚の回遊層）は15～20メートル。しかも、4～5キロ級の大物も釣れるため、ハリスは「太く短く」6号6メートル。ハリも11号ではないと折られることもある。

手塚さんはイサキを20匹釣り、大きなアタリもあったが、ハリスごとブッツリと切られてしまった。船中ではほかの4人で6匹とまずまず。

手塚さん　マダイ釣りの手順は覚えることができた。海面からタナ取りなんですね。リールの道糸で確認するのも慣れた。富浦で初マダイといきましょう。

10日、富浦はベタナギ。吉浦ではややウネリがあったが、酔い止め薬を飲んでいた手塚さん、気持ち悪くなることはまったくなかった。富浦ではとうとう薬は服用しなかった。

手塚さん　ちゃんと薬を飲んでいれば大丈夫だけど、もしかしたら船に強かったかも。それと、コマセマダイはやることがいっぱいあって、酔っているひまがない。楽しいなぁ。

サオを出して1時間、前日の吉浦での釣行の効果が出た。カゴにコマセを入れて、ハリにオキアミを付けて、船長の合図で投入する。この動きは滑らか。サオ先を注視していたら、ビクン、と大きく震動して、キューンと海面に突き刺さった。一瞬、動きが止まったが、慌てずに小刻みに鋭く合わせて完ぺきにハリ掛かりさせた。たるませずにゆっくりリールを巻いてくると800グラムのマダイがあがってきた。

手塚さん　うれしい。船長の指示通りにやれば釣れるんだ。ビギナーズラックがマダイにはあるんですね。

富浦はハリス3号10メートル。「細く長く」でマダイを待ち受ける。タナも47～60メートルと巻きごたえも十分だ。

手塚さん　結局4匹釣って、1匹は手のひらサイズだったからリリースしました。また、マダイはやってみたい。今度は静岡の海で腕試ししちゃおうかな。

この秋のマダイ狂騒曲、乗らない手はない。【寺沢卓】

▼問い合わせ　吉浦「八平丸」【電話】04・7096・0062。マダイ乗合は午前6時出船、コマセ＆氷付き1万500円。富浦「共栄丸」【電話】090・7244・0460。午前5時30分出船、コマセ＆氷付き1万円。