静岡・久料 マダイの反応濃い これからが本番

940グラム。きれいな魚体に木村さんもにんまり

<釣りをしようよ プルルン体験隊>

今年も「駿河湾マダイダービー」が始まる。3月16日から5月19日まで。マダイ3匹の合計重量で競う。駿河湾をぐるんと囲むように御前崎、久料、戸田、安良里の4地区からの出船となる。そこで久料「魚磯丸」から出漁して様子を探ってきた。日本テレビ系の人気番組「ザ!鉄腕!DASH!!」に出演する木村尚さん(62)が因縁のあるサオを握って挑んだ。

昨年12月17日にさかのぼる。「海のおじさん」こと木村さんは静岡・久料「魚磯丸」(沼津市)にいた。前日16日夜、戸田でヤリイカ釣りにチャレンジしたが、何も捕獲できずに気持ちは落ち込んでいた。今冬の冷えない潮ではヤリイカも動かない。巡り合わせが悪かった。そこで、船に乗るわけでもなく、魚磯丸に顔を出したのだ。

以前から店内に展示してあった久保田清船長の自作のサオが気になっていた。年間生産は20本に満たない。丁寧に1本ずつ作っている。価格は約10万円。木村さんは思い切って購入した。これで、マダイを釣ってみたい。継ぎザオしか持っておらず、キューンと「逆U字」型に曲がるサオに憧れを持っていた。

それから2カ月半。「久保田船長の手作りだから『魂を入れる』なら魚磯さんだ」と心に決めていた。3月8日、魚磯丸の午前マダイに乗り込んだ。

魂を入れる。

何やら物々しいが、手に入れたばかりのサオで、初めての魚を釣ることを「魂を入れる」と表現する。

この釣行には、タコボウズ記者(寺沢です)の高校時代の同級生、手塚宏(55、敬称略)が同行した。昨年10月10日、千葉・内房の富浦「共栄丸」で生まれて初めて乗ったコマセマダイ船で800グラムを筆頭に3匹釣り上げ、手のひらサイズ1匹を海に戻した。手塚、すっかりマダイ釣りのとりこになっていた。

この釣行の前日7日、魚磯丸の午後便で木村さんは底物五目に乗って、アマダイ2匹とアジとイシダイをそれぞれ1匹ずつ釣っていた。マダイ午前便の朝は早い。魚磯丸から車で5分の民宿「西浦荘」に7日夕に集合して、木村さんの釣った魚を刺し身に、アマダイは酒蒸しに。楽しい夕飯をいただいた。

木村さん ぜいたくだ。イシダイ、アマダイ、アジの料理、どれも素晴らしい。釣りの現場を楽しむ。釣りはこうじゃないとね。

マダイ釣りの前に英気は養われた。

ただ、今回のミッションは“入魂”だけではない。16日から熱い戦いが繰り広げられる駿河湾マダイダービーの様子を事前に探ることも取材課題だった。

出船は午前6時。富士山が朝日にキラキラと輝いていた。手塚は「はぁ~、なんたる幸せ。こんな富士山を拝めるなんて。釣果は気になるけど、オレ、もう満足できてる」とニコニコ笑いながら、太陽の角度によって表情を変える富士山を何度も撮影していた。

木村さん その土地ごとの釣りの楽しみがあっていい。駿河湾の富士山は、この景色だけで財産ですよ。

マダイの反応は濃い。現在は深くて水深130メートル前後だからタナ(魚の回遊層を計算してコマセカゴをキープさせる海面からの距離)は110~120メートル。カゴは100号、ハリス3号で全長10メートル。この長さをどう克服するかも重要だが、ちゃんとタナを保つには、電動リールの表示情報は参考にして、道糸からどこまで仕掛けを落としたのか把握していないといけない。

コマセマダイは、魚を寄せるコマセ(オキアミ)をまいて待つ-そう思われているが、そこからの誘いが重要なのだ。タコボウズ記者が船長の指示するタナにコマセカゴをセットして、数分後に50センチだけゆっくりサオ先を上げて、また静かに戻した。その瞬間、ブルブルブルン! いきなり引ったくられて、サオが曲がった。800グラムのマダイだった。

直後、誘いをかけた木村さんのサオもギューン。電動機能を使わずに慎重に手巻きで対応した。「これはスゴい。マダイの引き込みをサオが吸収してくれる。おお、楽しー」と木村さんは雄たけびを上げた。740グラムのマダイだった。念願の魂が入った。その後も940グラムも追釣した。

手塚は苦戦。なんとか47センチの大きなアジは釣り上げたがマダイにはそっぽを向かれ「今回はきれいな富士山だけでいい。次回は釣る」と唇をかんだ。

釣ったマダイとアジは帰り際に「西浦荘」でしゃぶしゃぶ、煮付けなどに仕上げてもらった。富士山と駿河湾を眺められる風呂でゆったりした後、舌鼓を打った。木村さんと手塚、ひと言「あー、幸せだ」。久料のマダイ、これからが本番だ。【寺沢卓】

◆船宿 久料「魚磯丸」【電話】055・942・3230。マダイ乗合船集合は、午前便6時(納竿同11時)、午後便正午(同5時30分)。4月からの時間は要確認。集合時間ぎりぎりではなく、準備もあるので30分ぐらいの余裕があるといいですよ。料金は、付けエサ&コマセ&氷付き9500円。レンタルロッドは電動リールセット2500円、手動は1000円。

◆宿泊 民宿「西浦荘」【電話】055・942・2229。1泊2食付きで7560円~。釣った魚の持ち込みなどはおいしくさばきまーす。要予約。

◆駿河湾マダイダービー 3月16日(土)~5月19日(日)の期間で御前崎「博栄丸」、久料「魚磯丸」、戸田「たか丸」、安良里「ふじなみ丸」の4地区合同で実施するマダイ釣り大会。期間内なら何度でも挑戦できて、3匹の合計重量で競う。同重量の場合、そのうちの1匹重量で重い方を上位とし、それでも同じ場合は2番目の重量、3匹とも同量ならば年の功を尊重して年長者を上位とする。参加するには初回に参加費1000円を支払い参加賞と交換する。2回目以降は乗船料だけでよい。記録は1匹からの更新可能。なお、東京湾でも「Tokyo Bayマダイダービー」が同期間で開催され久里浜「大正丸」、八景「太田屋」、勝山「宝生丸」、富浦「共栄丸」の4地区が対象となる。