安富さんがV 史上初3匹同寸/磯メジナダービー

11月24日、46センチをキャッチした安富さんはやや緊張した表情。後方では富士山が祝福するようにくっきり見えていた

<磯&砂浜&堤防パラダイス>

昨年11月23日から今年3月3日まで101日間、雲見、石廊崎、大瀬の3地区の合同で「第6回伊豆半島磯メジナダービー」が開催された。期間内に釣り上げた3匹の合計全長審査。今回は、合計数値がダービー史上初めて同寸となったが「最長1匹勝負ルール」で大会2日目の11月24日に46センチを釣り上げた安富秋夫さん(46=座間市)が、終盤で2年前の覇者・大澤雄一さん(46=小金井市)に追い抜かれたが、意地で並んで初の栄冠を手にした。

安富さんがメジナダービーを制した。

3匹全長で128・8センチ。

堂々たる成績だ。最長の46センチは、ダービー2日目の昨年11月24日だった。

安富さん サンデーフィッシャーマンなので、ダービーには今まで出場していたけど、参加だけ。優勝なんて、夢のまた夢と思っていた。本当にうれしい。

その11月24日は、やはり日曜だった。11月だというのにメジナの活性が高くて、ウワサを聞きつけたメジナ師が雲見「佐市丸」に押し寄せていた。港から近くの沖磯には乗れず、渡船では最も遠い松崎町の白根に割り当てされた。

安富さん 鈴木店主の心意気なんです。この白根は一発がある。大物のメジナが出ることで知られている。ここは期待に応えないといけない場面ですよね。

安富さんは20歳ごろは船のワラサ釣りに熱中していた。同時期に丹念にヘチ際を探っていくクロダイ釣りに心を奪われた。その際に外道で釣ったメジナの鋭い引きに魅了され、雲見「佐市丸」の門をたたいた。初心者なのに常連客も受け入れてくれて、日曜だけではあるが、かわいがってくれている。ここは期待に応える大チャンスだった。

しかし、午前中、ウキはピクリとも動かなかった。ときたま小さいフエフキダイがようやく掛かる程度で、エサ取りの常連のクサフグでさえ姿をみせなかった。潮は沖に静かに逃げていく。道糸は自然に引かれていくものの、生命感を察知することはできなかった。

正午付近、潮は止まり、向かってくる流れが出てきた。何も気配も感じなかった午前中、浅場にコマセを打ち込み続けていた。濁りもなく澄んだ海の色に不安を感じて、道糸を1・5号から細い1・2号に切り替えた。すべて魚に見破られているような気持ちに支配されていた。

心の準備はまるでできていなかった。

安富さん 道糸がやや張ったんです。キュン、というアタリではなく、言葉にすると「ぬーん」という不気味な感じ。とりあえず合わせて、引き寄せたら、海面でバシャ。ありゃ、デカいと慌てたけど、冷静にタモ網ですくい取りました。とれてよかった。この日はこの46センチだけでした。

なかなかエンジンがかからず、年が明けてからようやく40センチ超が釣れた。安心はできなかった。2月18日に誕生日で3日差の大澤さんが42・5センチを釣って2・3センチ差に詰め寄られ、22日にずっと守っていた首位を明け渡してしまった。その差は1・3センチ。残り5日で、41・8センチを釣り上げて、その1・3センチを埋めて、128・8センチで並んだ。

ルールでは3匹の全長が同寸の場合、1匹の長さで勝負を決する。あの46センチが決め手となった。

4日間であったがトップに君臨した大澤さんは、2年前のダービー覇者。昨年はがまかつの磯メジナの全国大会G杯で4位に輝いていた。

大澤さん G杯からの勝負勘は維持できていた。惜しかった。でも、いい釣りができました。面白いダービーでした。

勝負は時の運。今、まだまだ、40センチ超のメジナが釣れている。ダービーは閉幕したけれど、伊豆半島のメジナ釣りは、どこまでこの熱気が続くのか。楽しみ、楽しみ。【寺沢卓】

◆ルール 昨年11月23日に開幕し、最終日は3月3日の101日間で、メジナ3匹の合計全長で競う。1匹からの入れ替えができて、期間内なら何度挑戦してもOK。従来の1日での「一発大会」では曜日で来られない場合もあった。また、日常と同じ環境での競技形式なので「普段通りの釣り」で精神的プレッシャーも比較的なく、初心者でも参加できる。

西伊豆・雲見「佐市丸」(鈴木佐利店主)、南伊豆・石廊崎「橋本屋」(山本一人店主)、同・大瀬「倉の下」(山本良一店主)の3地区合同大会で、最初に登録(1000円で参加賞のオリジナル保冷バッグと交換)すれば、どこから渡船して磯に登ってもいいので、風向きや条件で地区を選ぶことも可能。

今回は59人が参加した。トップ10には豪華賞品、また11位以下の下1ケタ「9」には飛び賞が贈られる。