沼津・久料 マダイ「数の秋」だけど「型の秋」も

終了間際に2・6キロをなんとか釣り上げた

<ママも一緒に! 家族で釣り>

春に大型がバンバン釣れて盛り上がった沼津・久料「魚磯丸」-やっぱり、秋もマダイファンを裏切らない。マダイ釣りにはこんな格言がある。「型の春、数の秋」。今秋の久料は数だけでなく、サイズも期待できそうなのだ。雨予報の忍び寄る9月のある日、「型の秋」を感じたくて魚磯丸から出漁してみた。

久料の海には、大物がお出ましになる時間がある。「水戸黄門」でご隠居が副将軍であることを証明する印籠(いんろう)をすぐには出さないように、久料の大きなマダイは午後便、しかも、日暮れ直前にヒットすることが大半だ。

大物は最後の最後で、もったいぶって登場するみたいだ。

そんな傾向はあるものの、ここはあえて午前便に乗ってみた。夜明け前から雨がパラつく予報だったが、タコボウズ記者の日ごろの行いがすこぶる良かったことで、雨雲が遠慮したのかもしれない。

ちなみにマダイには「年間行動計画」がある。

3月に恋に落ちて、ちょうどサクラの咲くころに産卵する。このときオスは、赤い体色に炭がかかったようにすすけて黒くなる。「乗っ込み」と呼ばれる産卵活動を示す婚姻色で、オスとしての強さを体色で表現している、との説もある。

やがて、赤ちゃんマダイが大海に解き放たれ、スクスクと成長して、春に生まれたばかりの赤ちゃんダイも、この秋のころには500~800グラムにはなっている。

暑さにかげりが出る9月ごろにはピンクのきれいなマダイが次々に釣れる。春に生まれたマダイでも、1キロ前後の大きな個体も出てくる。これが「型の春、数の秋」の正体なのだ。産卵で体が大きくなり、その生まれた個体が実りの秋を迎えるからだ。

ただ、今年の久料はちょっと様子が違う。数だけではなく、サイズも良さそうなのだ。

12日午後船、3・1キロが釣れた。15日には5・3キロ、16日は6・7キロがサオをしならせた。17日が4・7キロ、19日4・8キロとすべて午後船だった。午前船でも2キロ台が順調に姿を見せていて、大物を狙う流れはホンモノなのかもしれない。

そして、取材では午前便に乗った。午前6時半には駿河湾に大きな虹の橋がかかった-。やっ、これは大漁の吉兆か?

秋ダイらしく500グラム~1・5キロは次々にヒットした。マダイよりも大きなアジもヒットした。実りの秋を体感できた。

釣り場は、浅場の水深35メートルと深場の75メートルの2カ所を交互に入った。久料沖の特徴は、この浅場と深場が隣接していることで、マダイにとっては身を隠す場所が多くあるようだ。マダイの久料は海底の起伏の激しさが一因になっていそうだ。

春に誕生したと思われる0歳マダイは好調だった。今春は6~8キロの大ダイが連日掛かっていたこともあって、産卵するマダイが多いことが容易に予測でき「数の秋」は想定内だったといえそうだ。

ただ、今回の取材では「秋でも型」が大きな狙い。サオ先の反応も含めて、大きなマダイの姿はなかった。この取材釣行で最後のポイントに入った。タナ(魚の泳層)は60メートルの海域。やや深場を攻めていた。

指定ダナから3メートルゆっくり上げて、静かに3メートル戻す誘いをかけた。サオ先がギュン、と入った。慌てずに合わせた。乗っている。底に差し込むときはサオを持って耐えて、動かなくなったら道糸を張ったままリールをゆっくりと巻いた。2・6キロの中ダイだった。

とてつもない大ダイはキャッチできなかったが、可能性は感じられた。両手には強烈な引き味の余韻が残っている。さらに強い引きが久料の海で待っている。【寺沢卓】

▼船 久料「魚磯丸」【電話】055・942・3230。マダイ乗合船の集合は、午前5時半&正午。氷とエサ付き。予約や料金などは電話で問い合わせてください。ヒラメ、根魚五目なども出漁中です。