内房・金谷 奥田シェフが釣って作る絶品イタリアン

ワラサを釣り上げて奥田シェフ、ニッコリ

<ママも一緒に! 家族で釣り>

今、もっとも勢いのあるイタリアンシェフとも称される奥田政行さん(50)が内房・金谷「光進丸」でサオを出した。10日、都内で釣った魚の特別ディナーを開催。食材調達も手掛けて気分も高揚、計18種の料理を次々につくりあげた。関東各地から集められた新鮮な魚が、ぜいたくで豪華な晩ご飯に変身した。

奥田シェフの経営するレストラン「ラ・ソラシド」(東京・墨田区)でのディナー前日9日の釣行。狙いは、別名「黄金アジ」で知られる体色がキラキラしたアジだ。

ただ、肝心のアジがヒットしない。台風の影響でもあった。千葉を襲った台風15号は東京湾を直撃。その際、イワシなどの小魚が台風とともに北上して東京湾に入ってきた。ブリの幼体ワカシの群れも追いかけてきた現在、東京湾の各所で丸々と成長したイナダが回遊しているのだ。

イワシミンチのコマセを振ってアジを寄せる釣りなのだが、イナダやワラサがちょっかいを出してくる。アジよりも青物が反応して掛かってしまうのだ。

今回の「釣った魚でのディナー」が実現したのは理由があった。奥田シェフと旧知の海洋環境専門家木村尚さん(63)が「釣り魚のおいしさを周知したい」との思いに、山形・庄内の海辺で生まれて育った奥田シェフが「ぜひ、やりましょう」と共感して実現した企画だった。

青物に邪魔をされてアジは釣れないが、そのおいしいアジを食べているイナダ&ワラサは「さぞやうまいだろう」との仮説を立てた。少ないながら釣れたアジを泳がせて、ワラサをゲットする「わらしべ長者作戦」に切り替えた。

内房の釣りに精通している森山利也さん(55)が奥田シェフのコーチ役に。「泳がせ釣りは慌てないこと。ガツガツとサオ先が揺れるけど、キュンと絞られるまで待つ。落ち着いて、落ち着いて」。森山さんの解説が終わらないうちにサオが弓なりになった。

サオを持って、歯を食いしばって奥田シェフがリールを巻いて釣り上げたのは、狙い通りの3キロ超のワラサ。「この引き味はスゴい。まだ両手に感触が残っている。泳がせ釣り、楽しいねぇ」と奥田シェフは子どものように笑った。

特別ディナーでは、庄内出身の奥田シェフが腕をふるうので、庄内町の鯉川酒造が料理に合った日本酒を出してきた。釣った魚のイタリアンにうまい日本酒-。結果からお伝えするとディナー会場では「もう、たまらん」「うますぎる」との声が渦巻いた。

その鯉川酒造の佐藤一良社長も光進丸に同乗し、人生初の船釣りに挑戦した。アジは1匹だけだったが、イナダを次々にヒットさせて「釣りは面白いですね。その魚を食べられるなんて夢のようです」と目をキラキラさせていた。

奥田シェフはその後も順調に釣り続け、3~4キロのワラサを計3匹キャッチしてご満悦だった。イナダも船中で20匹以上が釣れて、アジからの方向転換が功を奏して大漁で“仕入れ”が終了した。

この2日前の7日、木村さんは富浦「共栄丸」に乗り込んでマダイと格闘した。ここでもイナダの猛攻があったが、何とかマダイ5匹を釣り上げた。木村さんは「難しかったぁ~。でも、マダイの気配は感じます。サオを上下動させて誘いを入れると効果的かも。この時期の秋ダイは体色が衝撃的に美しい赤。素晴らしい」と大喜びだった。

豊かな内房でマダイやアジ、イナダ&ワラサなど、茨城沿岸かではマダコとヒラメ。役者はそろった。

さあ、奥田シェフの出番だ。特技を聞くと「ボクね、磯の岩をなめるだけで、そこにどんな味の魚が泳いでいるか、分かるんだよね」と真剣な表情で話す。金谷沖でも、アジを釣り上げた直後に魚に鼻を近づけて「このアジ、おいしいヤツだね」とうっとりした表情で断言していた。

今回は「おいしい魚料理」を意識して、釣った直後に血抜きをした。ワラサは尾の方にもキズを入れた。奥田シェフは「キズを入れた尾付近の味は深いですね。尾の周辺に何かの成分があって、身にそのおいしさが回っていく感じ」と話した。木村さんは「意識してキズを入れたけど、血抜きとは違う効果があるのかも。興味深い」と話した。

料理はすべておいしかった。魚の処理方法で味に違いが出ることは発見だった。尾にキズ、さらなる検証をしてみたい。【寺沢卓】

▼富浦「共栄丸」【電話】090・7244・0460。午前マダイの乗合船は集合午前5時30分、コマセ&氷付き1万1000円。ハリス4号10メートル、ビシ80号(FLかLサイズ)。

▼金谷「光進丸」【電話】0439・69・2697。LTアジ、ウイリー五目、カワハギの乗合船は午前7時出船。料金などは要確認。