アユ解禁で人気の友釣りデビュー 場所選びが最重要

思い思いの場所でオトリを泳がせる(昨年の狩野川解禁写真)

関東とその周辺の主要河川では、5月下旬から6月にかけてアユ釣りが解禁となる。新型コロナウイルスの影響で5月半ばの予定を延ばした河川も多い。5月30日には静岡・狩野川がスタートする。中には、今年こそ「アユ・デビュー」をと考えている人もいるはず。ベテランも初心者も予習復習を兼ねて、日本友釣会連盟相談役で日刊釣りペンクラブの相吉孝顕会員(86)に、アユ釣りのコツを伝授してもらおう。

相吉さんによると、アユの友釣りには「1場所、2オトリ、3上手(腕前)」という格言があるという。場所選びが、そっくり釣果につながる。

では、どんな場所がいいのか? 答えは「石を釣れ」。

アユは石の中に付く藻類(通称「アカ」)をエサとしている。だから、アカを食べた「ハミ跡」のある石を見つける。「遠くからでも、水中で黒々と光っている石があれば、絶好のポイントになる」(相吉さん)。

川に着いたら、堤防や橋の上から確認してもいいだろう。日当たりが良くて底まで見えそうな浅瀬、水の流れが激しい深瀬の脇、川下から遡上(そじょう)してきたアユが少し休んでいそうな流れの緩むトロ場などに、アカはよく付いている。こうした場所で、水中に沈んでいたり、半分くらい見えている大石の裏側などが狙い目だ。

アユは、たたみ半畳程度のエサ場を自分の縄張りとしている。ここに侵入してくるアユに体当たりするなど、猛然と追い払う行動をする。その習性を利用したのが、「友釣り」。アカ付きのいい石の周囲など、居そうな場所を判断したら、サオを立ててゆっくりとオトリアユを泳がせる。その後ろにある掛け針で、アタックしてきたアユを掛けるタイミングを待つ。

レジャー白書によると、川釣りの中で「やってみたい」と希望するのは「アユの友釣り」という。実際に道具をそろえるともなれば、約50万円はかかるだろう。

最近では各河川の漁業協同組合(漁協)や川沿いの自治体、釣り具メーカーなどが新たなファン層の開拓に努めている。ウエアと道具はレンタル、手取り足取り丁寧に指導するコーチも付く初心者教室、女性限定大会(当然、初心者歓迎)を開催するなどしている。「腕に覚えのある人たちだけの楽しみではなく、極意を伝えれば裾野は広がる」(相吉さん)。

○大石の裏にアカたっぷり

昨年の台風が、主要河川の状況に好影響を及ぼしている。水が出て川が洗われ、きれいになった場所が多いからだ。「大石の裏側などにしっかりアカが付いているポイントが多い。型も10センチ以上が多く、全般に大きい」(狩野川漁協)。遡上も栃木・那珂川は昨年の10倍、茨城・久慈川もまれに見る多さと、全体に群れが濃そうだ。20日に予定していた解禁を6月1日にした静岡・興津川は、「遡上は前年並み。型はやや小ぶりで平均10センチ前後」という。

【釣り宿】

◆那珂川=人見釣具店【電話】0287・54・0556

◆久慈川=菊池商店【電話】0295・72・3037

◆興津川=あこがれ亭【電話】054・393・3814

○取り込み注意

釣り人が立ち込んでいる場合、アユを掛けた後は引き抜くしかない。野球のグラブと同じで、右利きなら左手、左利きなら右手でタモを腰のあたりに構える。利き手でサオを握り、弾力で耐えながら道糸を手元に寄せる。オトリが川面に見えたらサオのしなりを利用して引き抜き、タモに入れる。いきなり、強引に抜き上げようとすると、道糸が切れたり、とんでもない方向にアユが飛んでいくこともあるので、注意。

周囲に誰もいないなら、サオをどちらかの肩に置いて首を傾けて固定する。そのまま、岸辺の浅場までゆっくり歩きながら道糸をたぐり寄せる。確実に獲物を得たいなら、この方法だ。

○ルール守って

このほか、気を付けておきたいこともある。

◆ダムの放流 釣り場よりもはるか上流で前夜にまとまった雨が降ると、急きょ放流する場合がある。サイレンが必ず鳴ったり、広域放送がされるので、聞いたら退避すること。

◆ライフジャケット 滑らないように工夫されたブーツで足元をガードしていても、水中の石で不意に足が滑ったりするので、必ず着用する。

◆雷 たとえ、オトリを泳がせれば次々と入れ掛かりする「ゴールデンタイム」でも、遠くで雷が鳴ったり、稲光が見えたら、すぐ道具を持って避難する。サオは特に感電しやすい。「命」が何より優先です。

◆コロナ対策 川から釣り宿に戻る際にうがいや手洗い、アルコール消毒を忘れずに。マスクはする。オトリアユを買い求めて並ぶ時は、「ソーシャルディスタンス」を守る。