夏の一瞬だけ、釣り人を熱くさせてくれる魚がいる。カマスだ。体長30~40センチくらいの細長くて丸い魚体と、鋭い歯が特徴でもある。
東京湾だと、千葉・金谷「光進丸」がLT(ライトタックル)のアジとのリレー船で出す時がある。6本針のフラッシャーサビキを使い、オモリ(40号~80号=水深や潮の流れによって使い分ける)を底に落とすだけ。仕掛けを小突いていると、いきなりサオ先が曲がっていく。大きな群れに当たれば多点掛けも可能だし、活性が高いと落とし込みでいきなり食う。条件さえ良ければ、1時間足らずであっという間に30匹近くお土産として確保できる。
この魚、「幽霊魚」と呼ばれるタチウオ同様、神出鬼没でつかみづらい。夏の潮になっていきなり釣れ始め、2~3週間釣れ盛ったと思えば、わずか1~2日でパタッと姿を消す。だから、釣れる時は「夏が来た」と思わせるほどうれしい。
実は食べてもうまく、塩焼きやフライ、塩昆布とあえるなど、アルコールやごはんが進む。「光進丸」の大女将(おかみ)、岡澤さち子さんのお勧めは「漬け」。マグロの漬けよろしく、「タッパー」(プラスチックの食品保存容器)でしょうゆなどで漬け込み、冷蔵庫で保存する。気が向いた時にあつあつのごはんに乗せて食べるという。
千葉・内房は勝山「宝生丸」で狙うマルイカはいよいよ終盤戦だ。毎年この時季に回遊してくる。スルメイカのように大きくサオをシャクるという訳でもなく、身が軟らかで強引なシャクリだと身切れしてしまうヤリイカのようなソフトにシャクリも必要ない。
このイカの釣り方、オモリ(40号)を着底させたら糸フケだけ取ってジッと待つ。4~5本のスッテを潮の流れに任せて漂わせる。サオは手持ちにして5~10秒ほど待つ。誘いに乗ってくれたら、エサの小魚だと思ってスッテを抱いてくれる。この「おさわり」を手元やサオ先で感じつつ、ゆっくり合わせて一定のペースで巻き上げる。これが「内房パターン」だ。
一撃で乗らなかったら、10メートル以上巻き上げて、再度落とし込む。「落ちてくるものに興味を示すので、いったんマルイカの視界から獲物を消して、もう1度興味を持たせるのが必要」と高橋賢船長は話す。いささか技術を要するかもしれないが、きちんと釣り方さえマスターすれば、30センチ近い良型に巡り合える。
マルイカはヤリイカほど身は厚くないが、薄い身の中に甘みとうまみがギュッと濃縮されている。刺し身はもちろん、豚キムチならぬイカキムチなどの炒め物にすると、その味が引き立ってくる。