SASが循環器官にダメージ/照山裕子の健康連載

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<防げフレイル!人は口から老いていく(31)>

運転中の居眠り事故などで問題になっている「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=SAS)」は、歯科でも治療する機会の多い疾患です。その名の通り、睡眠時に断続的に呼吸が止まる病態で、睡眠中に1時間当たり呼吸が10秒以上停止する(無呼吸)、あるいは弱くなる(低呼吸)頻度が、平均5回以上あることが診断基準です。

無呼吸や低呼吸の原因が、上気道(口・鼻から喉頭までの気道)の閉塞(へいそく)によって生じる閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と、脳幹の呼吸中枢からの呼吸刺激が一時的に停止することによって生じる中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)、そしてその混合型の3つに大別されますが、大部分はOSASです。

無呼吸と聞くと、息ができなくて死んでしまうのではと思われがちですが、人間の体は非常によくできていて、何かで調節しようとします。その結果、血圧が上昇して循環器系にダメージが及ぶなどさまざまな合併症が生じます。治療をしないと、じわじわと負荷がかかり、生活習慣病(脳梗塞、不整脈、糖尿病など)を引き起こす原因になることや、日中の眠気による事故に関係することが社会問題となっています。

SASは、何らかの原因で上気道が狭くなることで生じます。上気道は周囲の筋肉の緊張により内腔(ないくう)が狭まらないよう維持されていますが、睡眠中は緊張度の低下により健康な人でも狭まりやすくなります。特にあおむけで寝ると、舌根部が背中側に落ち込み、咽頭で上気道が狭くなります。その上でさらに上気道が狭まる要因が重なると、完全に閉塞し、無呼吸や低呼吸を招くのです。

原因のひとつは「肥満」で、脂肪組織がたまることで上気道を狭めます。痩せている人に生じるSASで多く見られるのが「顎が小さい」という特徴です。顎骨が小さいと、周囲の筋肉や舌が内側に収まりきらず、気道をふさいでしまうためで、欧米人よりも構造的に顎骨が小さい日本人はハイリスクとされています。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。分かりやすい解説はテレビ、ラジオでもおなじみ。昨年出版した「歯科医が考案・毒出しうがい」(アスコム)は反響を呼び、ベストセラーとなった。近著に「『噛む力』が病気の9割を遠ざける」(宝島社)。女性医師のボランティア活動団体「En女医会」会長。

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