いま、うつ病は大人のみならず、若い世代に広がろうとしている。小学5年生になる男児C君は、春のクラス替えで環境が変わったことがきっかけだった。もともと人見知りをする子だったが、学校の授業についていけなくなり、宿題をしていかなかったことで叱られた。そのほか忘れ物も多く、学校に行くことがつらくなってしまった。家族によると朝起きられず、元気がなくなった。そのうち悪態をついて家族にあたるなどの問題行動も目に付くようになったため、近くのメンタルクリニックを受診したところ、うつ状態にあると診断された。現在も不登校の状態が続いている。

一方、中学1年生の女子D子さんは、入学後に入部した部活動でいじめに遭い、学校へ行けなくなった。担任は家庭訪問を繰り返したが、よくならず、結局、不登校となり病院でうつ病との診断が下りた。

若い世代は、大人に比べてうつ状態が行動や身体に現れやすいといわれている。自分の気持ちをうまく表現できないことも一因だが、一見すると心の問題ではないと思われがちで気づかれにくいという特徴がある。

たとえば頭痛や腹痛、「だるい」「言うことをきかない」「落ち着きがない」といった訴えや症状には要注意だ。学校や塾の成績が落ちたり、ストレスによるイライラから非行を起こしたりといったことの背景にも精神的な理由が潜んでいることが少なくない。

うつ病になるとそれまではよくできていた子も勉強に手がつかず、授業に身が入らなくなる。友人関係の悪化、いじめ、失恋、受験の失敗、親の転職や離職、離婚、あるいは病気など家庭や学校の影響が引き金となることが多いといわれる。SNSによるスマホいじめなど、以前はなかった類のトラブルに巻き込まれたりする可能性もある。そして、不登校、引きこもりといった子どもたちのサインに周囲は気づくことが大切である。