睡眠不足はうつ病のリスクとなり得る。久留米大学・副学長で医学部神経精神医学講座の内村直尚(なおひさ)主任教授はこう話す。

「睡眠をとることはエネルギーの消費量を抑えること。寝ている間が一番消費量を少なくできる。その結果、エネルギーを使わないことで脳と体を修復しているのです。いわば脳と体にたまっていく老廃物による悪影響を防ぐことになるのです」

では、良い睡眠とは何か。

「睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠の2つからなる。レム睡眠は寝ている間、脳は活発に動いています。そのため、だいたい夢を見ています。それに対してノンレム睡眠は、脳や体を休ませる睡眠だといわれています」

実はノンレム睡眠には、1から3までの段階がある。始めは浅く、次第に深くなっていく。

「90分間隔でレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返し出現するという『リズム』が大切なのです。つまり、90分が1セット。質のいい睡眠というのは、この規則正しいリズムを保つことだといえます。それが不規則な生活で、リズムが乱れるといけない。そしてノンレム睡眠の3段階をいかに増やしていくかが、大きなカギだということです」

3段階のうちの深い睡眠が現れてこそ、質のいい睡眠がとれたということになる。しかし、年齢とともに睡眠の質は衰えていく。

「若いとエネルギー消費が大きいので、深い睡眠が必要です。その時、成長ホルモンが分泌され、成長発達を促し、免疫力を高めます。しかし40歳を過ぎてくると、睡眠はだんだん浅く短くなっていくのです」

例えば10代なら、休日に昼間までぐっすり眠ることができる。しかし中高年になると、そうしたことはできなくなる。

「朝早く目が覚めたり、夜中に起きたり。年とともに眠りが浅くなるということは、睡眠の質もやはり加齢現象だということ。年齢によっても違ってくるというわけです」