睡眠の質を高めて深い睡眠を得る、休日でも平日と同じ時間帯に朝起きることで規則正しいリズムを身につける。こうした工夫がうつ病の予防になるのか。「目覚め方改革プロジェクト」のリーダーで久留米大学医学部神経精神医学講座の内村直尚主任教授はこう話す。

「うつ病の予防になります。睡眠時間とうつ病のリスクについて研究したデータによれば、7~8時間睡眠をとっている人がうつ病になりにくいことがわかっています。一方、睡眠時間が5時間を切るといった睡眠不足の人ほどうつ病になりやすい。子どもは別ですが、そうかといって9時間以上寝るような睡眠時間の長すぎる人もまたうつ病になりやすい。それは睡眠の質が悪くなるからで、寝すぎるとかえって悪いというわけです」

長く寝ると途中で目が覚めたりして質が落ち、浅くなる。睡眠時間についてはうつ病のみならず、体にもさまざまな影響を及ぼすことがわかってきた。

「たとえば高血圧。睡眠時間が7~8時間の人に発症する率がもっとも低い。短くても長くてもよくない。肥満も同じで、短くても長すぎても肥満になりやすい。糖尿病では睡眠時間が7~8時間を1とすると、5時間未満では発症率が2・5倍、6時間では1・7倍、9時間以上では1・8倍リスクが上昇します」

そのほか65~80歳女性を対象に、睡眠時間が認知機能の低下など認知症を発症するリスクを調べた研究では、睡眠時間が6時間以下だと7時間寝ている人に比べて1・36倍の危険があるという報告もなされた。

「こうした結果は日本もアメリカも、男女でもほとんど同じ。結果として寿命にも影響し、適切な睡眠時間ほど長生きできるのです」

睡眠不足や不眠は、うつ病やイライラなど精神的な健康、高齢者の転倒や骨折、認知症、中高年の生活習慣病。肥満、交通事故の誘因、そして医療費の増大というさまざまな悪影響を及ぼすことが指摘されている。