働き方改革における残業時間の上限規制は、労働基準法における大改革となる。つまり、法律上は上限のなかった残業時間が、法改正によりそれを超える残業はできなくなる。残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間。特別な事情がなければ、これを超えることはできない。「目覚め方改革プロジェクト」のリーダーで久留米大学医学部神経精神医学講座の内村直尚(なおひさ)主任教授はこう話す。

「時間外労働時間が複数月平均80時間以内、月100時間未満である一番の問題は、それ以上では睡眠時間が5時間を切ってくるということです。時間外労働にばかり目がいきがちですが、その本質は、睡眠時間が確保できなくなるということ。その意味でもいかに睡眠を取り、休息するかということが大事になってくるわけです」

そして、人生という長い時間軸で睡眠をとらえることを強調する。

「平均寿命約80年の4分の1は寝ているわけで、私たちは20年睡眠を取っている。にもかかわらず、起きている間の60年にしか、注意が向いていない。生きている、働いている、遊んだり、楽しんだり、より充実した60年間のためには、20年の睡眠を大切にしてほしい」

20年間の睡眠を大切にすることが、起きている時間の充実につながるというわけだ。

「睡眠を制する人が、たぶん人生を制するといえるのではないか。これまで日本人は睡眠のことを考えてこなかった。その理由は、睡眠の重要性が教育されてきていないためです。欧米では、子どものころはきちんと睡眠を取らなければいけないという教育を受けるが、日本では『寝ないことが美徳』とされる。寝ないで働くことが、頑張った証しになってしまう。そのあたりから変えないと」

眠らないことは、決して美徳ではない。

「自分の命を縮めることになっている。せっかくの人生を台無しにしないためにも、質の良い睡眠を取りましょう。健康で長生きのための睡眠を見直すきっかけにしてほしい」