まもなく今年も終わろうとしているが、私が今年1年、意識してきたのは「笑う」ことだった。6歳の娘とともに絵本やテレビで落語を堪能したりして、とにかく笑うことの楽しさを意識するように努めていた。これは、日々の仕事などでストレスを抱え込んだとき、一番ストレスオフだと感じる瞬間が「笑う」「歌う」「運動する」だからである。

特に「笑う」という行動はリラックス効果があるため、自律神経のうち副交感神経が優位に働くよう切り替える行動だ。笑うことでリラックスすると、血中の「コルチゾール」の分泌量が減ることが研究により明らかになっている。ストレスホルモンの異名を持つ「コルチゾール」は、代謝や消化、免疫などに影響を与えるため、この分泌が増えることはストレスを促すともいえる。

▼東京大学大学院の近藤尚己先生が全国2万人、65歳以上を対象に行った調査では、普段「ほとんど笑わない」高齢者は、「毎日笑う高齢者」より健康状態が良くないと感じる方が1・54倍という結果が。さらに、日常生活で「ほとんど笑わない」高齢者は、「毎日笑う高齢者」に比べて、脳卒中を発症した人の割合が1・6倍に、心筋梗塞を発症した人の割合は1・21倍に増えるとの研究結果が出ている。

また、吉本興業や松竹芸能とともに行われた大阪国際がんセンターの調査では、漫才や落語の「笑い」によってがん患者の免疫状態が改善したとのことで、なんと免疫細胞の一種「NK細胞」が1・3倍になっただけでなく、がんの痛みやうつなどの状態も改善傾向が見られたそうだ。それを裏付ける論文もあり、笑いと「NK細胞」活性の変化について研究されている西田元彦先生の調査では、強く笑いを意識したグループの85%が「NK細胞」の値が増加していたと報告されている。

▼笑顔というのは他人に与える影響も大きく、怖い顔より笑顔で接することで相手へのストレスも減り、心温まるコミュニケーションにつながるきっかけになることも。厳しいストレス社会を生きる秘訣(ひけつ)が「笑う」ことなのであれば、これは今すぐにでも実践できることだ。「笑いのあふれる社会で健康長寿」、そんな未来のために、来年も笑いの多い年を目指したい。