世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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精神疾患の診断は「問診」が柱-。患者さんの状態を事前に知るのに重要なのが、<13><14><15>回でチェックしてもらった「ひもろぎ式 うつ尺度(HSDS)・不安尺度(HSAS)」です。この尺度に対する患者さんの回答をみて、初診の患者さんがどれくらいの状態で受診されたかが、すぐにわかります。また、再診の患者さんでは、前回よりも状態が悪くなっている場合、その原因を知るために詳細に話を聞くことになります。

原因は人それぞれですが、状態が悪化する過程で多いのは「運動不足」「食事がきちっととれていない」など。そして、コロナ禍の今、「主人が家にいて仕事をし、私も家で仕事をしていると、お互いイライラすることが多いのです。そして、主人がことあるごとに私に暴言を吐くのです」というケースも多い。

今まで見えなかった嫌な面が、リモートワークで四六時中一緒にいると見えてしまうのです。それが原因でうつになった奥さんも少なくありませんし、ご主人がうつになるケースもあります。

問診と「うつ尺度・不安尺度」で病気の診断制度は格段に上がりますが、これで100%正確な診断になったか、というとそうではありません。そこで、さらに診断補助ツールを加えるクリニックが増えています。

例えば「CT(コンピューター断層撮影)検査」「血液検査」「脳波検査」「光トポグラフィー検査」など。もちろん、クリニックに医療機器がない場合は、その機器のあるクリニックや病院で検査を受けてもらうこともあります。診断補助ツールは、症状に応じて必要であれば問診に追加するのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)