スマホゲームはまると子どもに何十年も影響/依存症

 

 「久里浜医療センター」の樋口進院長にネット依存治療について聞く。

 樋口院長 入院治療がもっとも効果があるといえます。オンラインから完全に離れることができるので、頭の中が整理されるということが一番大きい。外来はアルコール依存症の人がお酒を飲みながら治療に来るようなものですが、入院ではそうした環境から離れることで、外来とは違ったよい面があるのです。また子どもたちと長野県で8月に8泊9日のキャンプを実施しています。その後11月にはフォローアップの3日間がセットです。できるだけいろいろやって患者さんの特性に合わせたものをすることが大事ですが、自分自身で状況を理解し、自らの意志でネットの時間を減らす、やめるという決断を、私たちがサポートする。それが基本です。

 ◆質問 社会の課題は何か?

 樋口院長 あまりにも規制がなさすぎると思います。ゲームは夕方の時間帯に宣伝し放題です。スマホゲームの市場はこの6年ほどで20倍にも。ゲームは課金により利益を上げるしくみなので、患者さんの中には1年に1000万円以上使ったといった人もいます。患者の多くを占めている未成年の子どもたちがゲームやネットにはまると、学校に行くことが困難になり、生活が乱れます。将来に対する投資の時期にドロップアウトしてしまうため、その後何十年にもわたり影響を受けることになります。

 ネット依存が深刻な理由はそこにあるのです。大人になってアルコールやギャンブルに依存する場合は自らの選択によるところがありますが、子どもは違います。メディアを含めて、こうした問題に世の中はもっと目を向けてほしいと思います。

 私たちは日本で初めてネット外来で治療を始めましたが考えていたよりも、実際はあまりに深刻、さまざまな問題があることに気づきました。こうした現実を多くの人たちと共有したいと思うのです。(次回から薬物依存について国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏に聞く)