手術明確なイメージあるか/ハートで決まる健康長寿

ハートで決まる健康長寿

<信頼できる心臓外科医とは(9)>

 私が心臓外科医になることを決めたのは、大学を卒業して各診療科を3年間研修して回ってからです。消化器外科や脳神経外科でも研修し、学び続けました。そこで感じたのは、がんの手術では、食道にしても胃にしても、がん部分を切除すると、それで終わりです。もちろん、胃を切除すると小腸を食道につなぐことはします。しかし、取った胃に代わる臓器を作ることはできません。

 最もわかりやすいのは、肺-。肺は右が3つ、左が2つ、合わせて5つの肺葉に分かれています。肺がんの手術は、がんができている肺葉を切除すると終了です。膵臓(すいぞう)、肝臓、脳も同じです。

 ところが、心臓だけは違います。血管の大動脈瘤(りゅう)を切除すると、そこには人工血管が入ります。心臓弁膜症で大動脈弁なり僧帽弁なりに問題が生じると、人工弁なり私の開発した「自己心膜を使用した手術」なり、必ず代替えの物を作ります。だから、機能的には落ちません。すべてが再建、取るだけではないので、その手術に自分の考えを入れること、工夫することができると思って選択したのです。

 心臓をとっただけでは、人は死んでしまいます。しかし、的確な再建を行うと患者さんは手術前よりも劇的に良くなります。だから、患者さんをそのように劇的に良くして、常に喜びの声を残して退院してもらいたいと思ったのです。だから、優秀な外科医ほど手術の前に手術の明確なイメージができているので、患者さんに話した治療が、手術の際に大きく変更されることはありません。術前に手術の的確なイメージを持っていて、それを患者さんに話せる心臓外科医を選択すべきです。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)