ホステスさんで脳卒中リスク減る/森田豊の健康連載

<ドクター森田の「健康になりなさい!2019」(7)>

「ひとり酒」「ホステス」「脳卒中」という三題噺(ばなし)? です。

「ひとり酒」といえば、演歌のタイトルのようですが、この手の酒の飲み方が好きな向きは要注意!? そんなデータがあります。友人や家族との酒盛りや、社会的交流の意味合いがある宴会が多い男性に比べて、適量の飲酒でも脳卒中のリスクが高くなるという、驚きの研究結果があります。

この調査は、厚労省の研究班が93年から開始。国内の40歳から69歳の男性約1万9000人を10年間追跡調査し、飲酒と循環器疾患の関係を調べたもの。その結果、約10年の追跡期間に、脳卒中629人、虚血性心疾患207人の合計836人が循環器疾患を発症したことが分かりました。

さらに、研究の開始時に行われた調査結果では、アンケート項目で<1>心が落ち着き、安心できる人がいるか<2>週1回以上話す友人の数<3>行動や考えに賛成して支持してくれる人がいるか<4>秘密を打ち明けることのできる人がいるか、などを調べて点数化し、社会的な支えが少ない人と多い人に分けて分析。この点数が低い人は、仲のいい人が少ない孤独な人=ひとり酒をしやすい人となります。

結果は、そういう「一匹おおかみ」タイプの人が1日平均ビール大ビン1本(日本酒なら1合)未満を飲む人であった場合、まったく飲まない人に比べて脳卒中の発症比率が1・2倍高いことが分かっています。酒量によって差は拡大、2本未満では1・8倍、3本未満では1・9倍の差でした。

一方、社会的な支えが多い人たち、つまりひとり酒をあまりしない人は、2本未満までは0・7~0・8倍と、飲まない人たちより脳卒中の発症が少ないものの、2本以上になると1・2倍前後に高まりました。

続いて、10年に米国、日本などで行われた研究結果を紹介します。脳卒中の患者さん179人を調べた結果、歩行のリハビリをする際に「ほめられた」患者さんは「ほめられなかった」患者さんより、歩くスピードなどの回復が大幅に速くなることが分かりました。ほめられることで意欲的になり、精神的にも肉体的にも健康増進につながることを意味します。

一緒に酒を飲む人物がおらず、脳卒中のリスクを低くしたい人は、ひとり酒などと気取らずに、マスターやおかみ、常連さんと会話のできる酒場に出掛ける。それから、健康のため、ほめ上手なホステスさんとの会話を存分に楽しむこと! です。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。