「一目ぼれ」科学的に実証/森田豊の健康連載

<ドクター森田の「健康になりなさい!2019」(8)>

「一目ぼれって、どれくらいの時間?」。確かに知りたい疑問ですが、これを研究した人たちがいました。研究結果を発表したのは、米フロリダ州立大学心理学のジョン・マナー助教授。学生を対象に人の顔が写った写真を眺めてもらい、1秒間でほかのものに視線を移すよう求める、という実験を同大の院生とともに行いました。その結果、写真の人物を魅力的かどうか、判断するのにかかった時間は、「0・5秒」だったそうなのだ。

この実験で興味深いのは、瞬時のうちに直感として、胸がドキドキときめく現象に至っているだけではありません。被験者で独身者は、当然のごとく異性の写真を食い入るように見たようでしたが、魅力的な顔の写真では規定時間を超える1・5秒間も視線をくぎ付けにされたといいます。

また、既婚者や特定の人と交際している被験者のほうは、異性の写真より、魅力的な同性を注意深く見ていたとか。同教授ら研究チームは「自分のパートナーを奪いそうなライバルとして警戒したためではないか」と分析しています。

一方、科学でもこの「一目ぼれ」は実証されています。女性向けファッション雑誌「コスモポリタン イギリス版」によると、研究結果を発表したのは、ドイツのフライブルク大学。その内容は、人間が「初対面の相手が好きなタイプかどうか、決定するのにかかる時間」は、「1000分の1秒」なんだとか。

同大学のバスチャン・シラー心理学博士は、「人間は『好き』や『嫌い』といった社会的データの処理を無意識のうちに行っている」と話しています。このチームが実施したのは「潜在的連合テスト」(IAT)と呼ばれるもので、初対面の人に対する反応を測定するために、記憶の中の概念や属性がどのくらい強く結び付いているか、を調べる心理テストなのだそう。

また、「電子的神経イメージング」と呼ばれる、脳内の各部の機能をさまざまな方法で測定し、決断に至るまでのプロセスを画像化することで、初対面の相手の印象を決定するまでにかかる時間を測定するというもの。でも「一目ぼれ」が科学的に実証された以上、逆にいうと「一目嫌い」もあるってことかも!?

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。