「座りション」お勧めします/森田豊の健康連載

<ドクター森田の「健康になりなさい!2019」(12)>

健康的にも、衛生的にも、男性には「立ちション」は勧めません。むしろ、「座りション」を、勧めます。

加齢が引き起こす「尿漏れ」は、男性特有の前立腺トラブル、そして尿道が女性に比べ長いために、尿の切れが悪くなるのが原因。多くの男性が経験しています。

2013年に152人の男性を対象に行われた調査でも、「軽い尿漏れ」が気になる人は、30代で18%ながら、40代で21%、50代で32%、60代で34%、70代で36%。40代から20%台に乗り、50代からは軒並み、3割以上の人が経験していたのです。

立ったまま用を足したとき、尿を完全に出し切る前に下着やズボンを上げてしまうと、尿漏れを起こす原因となります。尿道が長いため、おしっこをした後、尿道に尿が残っていることでパンツがぬれてしまうのです。

そこで、洋式トイレに「座って」、尿が全部出つくすまで待つこと。これなら、立ったまましたときのような、下着やズボンの圧迫もありません。

おしっこの仕方や衣服も、こうした「漏れ」と関係があります。小便をするとき、陰茎部の根元が上を向いているとその部分に尿がたまってしまうことがあります。ことに股上が浅いズボンでは、ペニスを引き上げるようにおしっこするため、軽い漏れを起こしやすいのです。最近増えている「前開き」のないボクサー型パンツも同様に漏れの原因となりやすいのです。

「立ちション」がもたらす不衛生の実態にも、目を向けなければなりません。男性が「立って」小用をすると、半径約1メートルの広範囲に、尿が飛び散っていることが多いのです。そのしぶきの数は1日に約2000滴ともいわれます。便器の根元からマットを含む床全体、それに菌の繁殖しやすい壁まで汚れます。そのまま放っておくと、尿が乾燥して悪臭を放ってしまいます。トイレの悪臭が消えないのも、これが原因です。家庭内の平和のためにも、座りションを勧めます。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。