男性更年期障害の可能性も/「コロナうつ」連載

<医療ジャーナリスト松井宏夫氏が渡部芳徳氏に聞く「コロナうつ」(18)>

世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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前回は診断補助ツールの「CT検査」を紹介しました。今回は「血液検査」-。「元気が出ない」「疲れやすい」「気分が沈みがち」などの症状があると、うつ病と思ってしまう。ただ、40代以上の男性では、うつ病ではなく男性更年期障害の「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群=late-onset hypogonadism)」であったり、合併していたりすることが意外に多いのです。

LOH症候群は男性ホルモンの低下により、「精神症状」「身体症状」「性機能症状」の3つの問題で症状が出てきます。血液検査で遊離テストステロン(男性ホルモンの1つ)の値を調べると、通常は11・8pg/ml以上が正常、11・8~8・5pg/mlが要注意、8・5pg/ml以下は要治療です。私たちは院内で、泌尿器科とコラボして、このようなLOH症候群の患者さんの治療も行っています。

うつ病で2年ほど治療を受けて改善しなかったA男さん(43)が、他の精神科クリニックから紹介され、血液検査で遊離テストステロン値を調べると6・5pg/mlでした。泌尿器科専門医がテストステロンの補充を2週に1回行い、私が抗うつ薬の減量を行いました。A男さんは元気になられ、最終的には抗うつ薬を切ることができました。

A男さんはうつ病ではなく、LOH症候群だったのです。もちろん合併しているケースもあるので、患者、精神科医、メンズヘルス医の“三人四脚”の歩みは重要です。

そのほかの疾患としてチェックすべきなのは、内分泌疾患の「甲状腺機能低下症」などです。私たち精神科医はしっかりチェックすべきで、実践しています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)