中等度以上はボルチオキセチン/「コロナうつ」連載

<医療ジャーナリスト松井宏夫氏が渡部芳徳氏に聞く「コロナうつ」(24)>

世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

   ◇   ◇   ◇

「コロナうつ(コロナ禍の影響で発症したうつ病)」と診断され、カウンセリングなどの「精神療法」で治らない場合は「薬物療法」。うつ状態が極軽度の場合は、前回紹介した「タンドスピロン(商品名=セディール)」を処方して治療。それでも治らない場合は、軽度から中等度のうつに効果があり、副作用が少なく不安症状に効果のある抗うつ薬「エスシタロプラム(商品名=レクサプロ)」を次に使います。コロナうつは不安症状が先行して発症するので、この薬が効果的です。中等度・重症になると、処方するのは抗うつ薬の「ボルチオキセチン(商品名=トリンテリックス)」。2019年11月に発売された最新の抗うつ薬で、「セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬」と称されています。ボルチオキセチンは、うつ病の中核治療薬SSRIと同じようにセロトニン再取り込み阻害に働きますが、さらにボルチオキセチンはセロトニン受容体のさまざまな調節にも働く抗うつ薬です。

セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつ。脳内で感情をコントロールする脳幹の中にある神経細胞で、ストレスに対抗して心を落ち着かせる癒やしの神経です。うつ病は脳内のセロトニン不足やセロトニンに反応する神経に異常が生じることによっておこる病気。ボルチオキセチンはダブルの働きでセロトニンをセロトニン神経接合部に長くとどめ、うつを改善します。

さらに、この薬は突然に服用を中止しても離脱症状がほとんどありません。SSRIは吐き気、めまい、頭痛、ふらつきなどのほか、射精困難、勃起不全といった性機能障がいもあります。そういう離脱症状がボルチオキセチンにはなく、主な副作用は「吐き気」だけ。治療では少量から始めると副作用もほとんどなく、中等度以上のコロナうつの患者さんには良い治療薬です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)