照山裕子・口の保健室<6>
先日ドラッグストアで、真剣な表情で歯磨剤(歯磨き粉)を選んでいる男性がいました。商品棚の表示から拝察すると着色汚れを気にされている様子でしたが、売り場には実に多くの種類が並んでおり「何を基準に選んだらよいのか分からない」というのが現実だろうと感じた出来事でした。 喫煙をはじめ、コーヒーや赤ワインなどを頻繁に摂取する習慣があると、色の濃い外来性物質が歯面に沈着することで着色汚れが生じます。こうした汚れを専門用語で「ステイン」と呼びますが、清掃剤(研磨剤)が配合された歯磨剤の使用がステイン防止に効果的であるという報告が2016年(平28)の日本口腔(こうくう)衛生学会誌に掲載されています。
清掃剤として配合されている物質はステインよりも硬度が高く、歯の表面のエナメル質よりも硬度が低いため、天然の歯を傷つけずに汚れだけが取り除ける仕組みになっています。しかし、歯よりも軟らかい樹脂の詰め物やかぶせ物、あるいは義歯(入れ歯)などが装着されている場合、ともすれば樹脂のほうに細かい傷や溝ができ、結果的に余計ステインがこびりつきやすくなるという悪循環を引き起こします。
天然の歯であっても、口の中が酸性に傾きやすい食生活を送っていれば、すでにエナメル質の硬度が低下し歯面がざらついているケースも考えられます。この場合はゴシゴシ磨くことでさらに表面が傷つき、歯が摩耗する可能性があるため注意が必要です。合わない歯磨剤で長い時間をかけてこすればこするほど、こうしたリスクも上がります。自分の口に適した歯磨剤の選択や具体的な使用方法を知るためにも、着色が気になる方はまず、歯科医院で相談していただくのが安心です。