子どもの虫歯罹患が減る一方で高齢者は増加傾向に/歯学博士・照山裕子「口の保健室」

 

照山裕子・口の保健室<36>

私が幼少期を過ごした昭和は、う蝕(虫歯)があって当たり前といった時代であったのに対し、令和の今では、子どものう蝕罹患(りかん)率は劇的な変化を遂げています。平成元年から平成28年までの変化を例にとると、3歳児のう蝕有病率は55・8%から15・8%、12歳児は88・3%から35・5%と、大幅に減少したことが読み取れます。

こうした変化が生まれた要因は明らかです。昭和45年の歯科医師数が3万8000人であったのに対し、平成2年には7万4000人とほぼ倍の数になり、誰もが歯科医療をきちんと受けられるようになったという社会環境の整備が成果を生んでいます。昭和の終わりから平成にかけて、フッ化物配合歯磨剤が広く普及したことも大きく影響しているでしょう。

しかしながら20歳以上のいわゆる大人世代を見てみると、実に9割以上のう蝕罹患率なのです。40歳以上では、歯を失う原因の4割が虫歯(再発を含む)によって抜歯になることもわかっています。特筆すべき点は、高齢者の虫歯が増加傾向にあるということ。歯周病が進行すれば歯ぐきが下がり、歯の根面(根元のくびれた部分)が露出しますが、ここは上部に比べて軟らかく、虫歯が進行しやすい場所でもあります。歯周病ケアと虫歯リスク対策のダブルが必須なのです。

現代の日本では、子どもの虫歯対策はおおむね成功してきたといえるかもしれませんが、その後の長い人生におけるフォローや、歯を守る知識の浸透がいまひとつという感じが否めません。100歳まで健康でいきいきと暮らせる社会を目指すには、まずは口を健康に。政府が提案する「国民皆歯科健診」というキーワードの意義を皆さんそれぞれが正しく理解し、自分自身の健康を見つめなおすきっかけになればと思います。