松井宏夫・正しく知ろう肝臓病<2>
肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように、障害が起こっても自覚症状が出ないことで知られています。だから、症状に気付いた時には、病気はかなり進行しているのです。では、その肝臓の病気にはどのようなものがあるのでしょうか--。
大きく分けると「肝炎」「肝硬変」「肝臓がん」になります。肝炎は肝臓に炎症が起こっている病態です。原因として多いのは「ウイルス性肝炎」。そのウイルスとしては、日本ではA型、B型、C型ウイルスが代表格です。ウイルス性肝炎を発症して慢性肝炎に進行すると、肝臓の線維化によって肝臓が硬くなる肝硬変、そして、肝臓がんへと進むことが--。
もちろん、肝炎の原因はウイルスがすべてではありません。ウイルス以外では「アルコール性肝炎」「薬剤性肝炎」「自己免疫性肝炎」「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」などがあります。アルコール性肝炎は、アルコールとアルコールが分解されてできる有害物質のアセトアルデヒドが原因で起こります。薬剤性肝炎は、薬の代謝をする肝臓が、代謝時にできる物質によって障害されることが原因。自己免疫性肝炎は、原因はまだよくわかっていませんが、身体を守る免疫に異常が生じ、免疫細胞が守るはずの自分の肝臓を攻撃してしまうことで起こります。そして、NASHは脂肪肝が原因。中性脂肪が肝細胞に過剰にたまることで炎症が起こるのです。
少し前までは、ほとんどがウイルスに起因していましたが、最近はウイルスが駆逐されるようになり、生活習慣病に伴う脂肪肝から肝硬変、肝臓がんになるケースが増えています。つまり、NASHにもっと注目すべきです。そして、肝臓は「沈黙の臓器」とあって肝硬変、肝臓がんに進行しても、症状はほとんどありません。それだけに普段の定期検査が大事です。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)
◆青木武士(あおき たけし) 昭和大学医学部外科学講座消化器・一般外科部門 主任教授。1993年(平5)、昭和大学医学部卒業。医学博士。日本外科学会代議員、日本消化器外科学会評議員、日本肝胆膵外科学会高度技能指導医。Best Doctors in Japanに2014~22年選出。蛍光ガイドによる解剖学的肝切除を世界で初めて報告。日本内視鏡外科学会カールストルツ賞受賞など受賞歴多数。患者さんに寄り添う外科治療をモットーとする。