「100歳まで食べられる歯と口の話」<2>
擦りむいてけがをした時、その場所は充血して赤くなり、熱っぽく腫れます。血液には止血に必要な成分や異物と闘う白血球などが含まれるため、傷ついた組織めがけて血管を拡張させ血流を増加する指令が出るからです。これが「炎症」と呼ばれる反応なのですが、侵入した細菌や死んだ細胞がきれいに除去されると炎症はおさまります。皮膚であれば、上皮組織が再生することで、けがした部分が修復されます。このように、比較的早く収束する炎症は「急性炎症」と呼ばれるのに対し、なかなか静まらない炎症は「慢性炎症」という名で区別されています。
慢性炎症を伴う病気は実にさまざまです。身近にある関節リウマチ、アトピー性皮膚炎やぜんそくなどもその一種です。死に直結するような疾患ではないものの、だらだらと長い間つらい症状が続く点が特徴です。時間の経過とともに患部組織が変形し、本来有している機能が損なわれることも珍しくありません。
歯周病は読んで字のごとく、歯の周りに生じる病気です。細菌の塊である歯垢(しこう=プラーク)の病原性が高まると、それを排除しようとする体の反応が起きます。歯ぐきがぶよぶよしてきた、赤く腫れている等の変化は、まさにそこで炎症が生じていることを体が教えているわけなのですが、口の中は常に湿っているため皮膚のように乾いて治ることがありません。食事に支障が出ては生きていけないので、ちょっとやそっとでは痛みも出にくく、相当に進行しない限りは自覚症状がないのも歯周病の怖い点です。成人の歯は親知らずを除いて28本あり、すべての歯に5ミリメートルの歯周ポケットがある人では約72平方センチメートルに相当する傷を保有する計算です。手のひらをぱっくり擦りむいた状態で毎日を過ごしていたら、確実に健康を害してしまいそうなのが想像いただけるのではないでしょうか。