「100歳まで食べられる歯と口の話」<50>
2021年にパナソニックが、日本、アメリカ、ドイツを対象に国別のオーラルケアへの意識実態について調べた興味深い結果があります。初対面の人と会う時によく見る相手のポイントとして、ドイツは1位、アメリカは2位に「歯(歯並びや色)」をあげたのに対し、日本では5位(目、体形、髪形、服装、歯の順)であったそうです。「歯=印象を左右するもの」という意識が日本では非常に低いことがわかります。
口臭に関して「とても自信がある」「やや自信がある」と答えた割合は日本19%、アメリカ68%、ドイツ79%、と国によって大差がありました。当然、セルフケアに用いる年間投資額も倍単位の違いです。
コロナ禍を経て、感染予防としての口腔(こうくう)衛生に注目が集まった点から、日本におけるオーラルケアの市場規模は年々拡大しています。歯科先進国と言われる諸外国とは入り口が全く異なるものの、元来清潔を重んじる日本人の感覚が関心を高めていることは大変素晴らしいことです。
しかしながら、当時は必死で手指消毒をしていたはずなのに、手洗い後に手を拭くハンカチを持たない習慣に戻ってしまった人を女子トイレで沢山見かけます。行動に対する目的や効果を根底から理解していないと、やはり人間は進化できないのだなと痛感する瞬間です。
多くの患者さんを診てきた医療者の立場からいえるのは、美しさと健康は表裏一体であるということです。清潔な白い歯は口臭とも無縁ですし、口の中が衛生的であれば万病を遠ざけるという事実は、これまでのさまざまな研究から裏付けされています。病気にかからず、いきいきと健康に毎日を過ごすことは誰に対してもメリットしかありません。セルフケアの効率化とプロケアによるチェックという2本柱を支えるために、歯科医院をうまく活用していただきたいと思っています。(おわり)