~新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防29
五感と脳の関係は深い。五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚のことで、五感で得た情報を基に脳はその場の状況を瞬時に認知する。五感のどれもが脳を活性化するのに役立つが、今回注目するのは香り。リラックス効果などが知られているが、脳へは別の働きかけもする。
「香りには、一定の記憶や感情を呼び起こす作用があるのです。この現象を『プルースト効果』といいます。仏作家のマルセル・プルースト著の『失われた時を求めて』の中に、マドレーヌを紅茶に浸したときの匂いから幼少の記憶を思い出す場面があるのです」
こう解説するのは、脳機能の活性化に詳しい杏林大学名誉教授の古賀良彦医師。続けて話す。
「動物はおいしいものや危険なものについて、視覚や聴覚などの五感を活用して記憶する本能があります。人間の脳にもその仕組みは備わっており、嗅覚はそのひとつとして、遠い昔の記憶をよみがえらせる働きがあるのです」
たとえば、街を歩いているときに感じた香りで、「ラーメンが食べたい」といった思いが浮かぶだけでなく、「〇〇さんと食べたラーメンと同じ香りがする。ずいぶん前になるなぁ。〇〇さんはどうしているだろうか」と思いをはせることがある。
「香りの情報に対し、脳は、瞬時に記憶にある香りかどうか照合する仕組みもあります。また、香りには、脳の血流を増やして活動を高めるものと、脳の活動を穏やかにしてリラックス感をもたらすものとがあります。アロマなどの香りもうまく活用すると良いと思います」と古賀医師はアドバイスする。