転移しやすい食道がん<2>
「食道がん」の5年生存率は男性が40・6%、女性が45・9%と上がっては来ているものの、まだまだ厳しいがんと言えます。その原因の第1が連載1回目で説明した「食道は手術が難しい場所にある」ということです。そして、第2としては「食道の解剖学的な問題」です。今回は解剖学的な問題に注目します。
食道の解剖学的な問題とは、食道の壁のことです。食道の壁は内側から「粘膜上皮(扁平=へんぺい=上皮)」「粘膜」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「外膜」の6層になっています。胃などの壁は「粘膜」「粘膜下層」「筋層」「漿膜(しょうまく)下層」「漿膜」の5層です。
大きな違いは、胃などは最も内側に粘膜がありますが、食道は粘膜の表面に扁平上皮があります。胃がんは粘膜から発生します。一方、食道がんはほとんどが「扁平上皮がん」で、扁平上皮と粘膜の境から発生します。すると、がんが下に広がるとあっという間に粘膜筋板に達します。そこにはリンパ液の流れがあるので、食道がんは粘膜下層に達することなくリンパ流に乗り、食道に沿って転移します。胃がんなどは、粘膜下層にたどり着いて少し転移が始まる程度です。食道がんは浅い粘膜に発生した時点で転移を起こしやすいがん。この点が他のがんとの大きな違いです。
食道以外にも、食道と同じように扁平上皮で始まる壁になっている臓器はあります。舌、咽頭、喉頭なども扁平上皮で始まるので、扁平上皮がんです。発生の仕方が同じなので、食道がんが咽頭がんとつながってできることもあります。ここは注意が必要です。
そして、食道がんは浅い粘膜にできた時点から転移を起こしやすいので、早期がんの段階から食道はすべて切除することになります。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)